シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

スティーブン・スピルバーグに捧げる/J・J・エイブラムス「スーパーエイト」  

スーパーエイト (字幕版)

 

スティーブン・スピルバーグといえば、「ジョーズ」「ジュラシック・パーク」「E.T」「プライベート・ライアン」「インディ・ジョーンズ」など、いずれも大ヒット作品を手がけた、ハリウッドにおける超ヒットメーカーです。

そして、そのスピルバーグ監督に見出された監督といえば、スターウォーズエピソード7「フォースの覚醒」でおなじみ、J・J・エイブラムスです。

今回は、J・J・エイブラムスが、製作スピルバーグで、スピルバーグ愛とオマージュをたっぷりいれた作品、「スーパーエイト」を紹介したいと思います。


スピルバーグ愛が強ければ強いほど、この映画は面白くなるのかも、しれません。

 

E.T×スタンドバイミー

 

あらすじをざっと紹介しますと、オハイオ州に済む田舎ものの少年たちが、自主映画をつくっている最中に、未曾有の列車事故に遭遇するところから物語がはじまります。

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それと同時に、軍が街にやってきて、事故を調査。

主人公であるジョーは、友人たちと映画の撮影を続ける中で、街に起きている異変に気づきます。

エイリアンにさらわれてしまった女の子を助け、エイリアンは再び宇宙へ帰る、という話です。

 

物語の前半は、いわずとしれたスティーブン・スピルバーグの名作中の名作、「スタンドバイミー」をこれでもかと思い起こさせるつくりになっています。

スタンドバイミーは、小説家になった主人公が過去を思い出す形で物語が進められていきます。

主人公のゴードン含む4人は、仲良し悪がき仲間といった感じですが、ある日、死体が森の中にある、という噂を聞いて、捜しに行きます。

その中で、列車にひかれそうになったり、仲間たちで野宿をしたり、少年が成長していく瞬間を描いた名作です。

 

 

また、後半は、E.T的な要素が含まれてきます。

どちらかというと、ETよりプレデターな気もしましたが、少年と異星人との交流を描いた、という点では、はずれてはいないのではないでしょうか。

大人たちは異星人たちを酷い目にあわせましたが、少年の純粋な気持ちを知って、宇宙人はその進退を決めるのです。

 

E.T. (字幕版)

E.T. (字幕版)

 

 

圧倒的な映像


ばっさりと言ってしまえば、ストーリーは、今の部分だけわかっていれば、問題がありません。


なぜならば、映像を楽しむことこそが非常に重要だからです。

 

親に内緒で真夜中の駅で行う撮影。
その中で、ちょっと不良っぽい女の子がみせる鮮烈な演技にみとれてしまうなど、青春真っ只中にいる彼らの気持ちがわかるシーンが盛りだくさんとなっています。


この映画のもっともすごい部分はやはり、列車事故の場面です。


絶対にありえない大事故なのですが、そのあまりの酷さ。
まるでプライベート・ライアンの世界に迷い込んでしまったかのような大事故っぷりをみるだけでも、映画をみた甲斐があるというものです。

プライベート・ライアンもまたスピルバーグによって戦争映画をいうものを根本的に変えてしまった作品でもあります。

カメラワークをうまくつかい、まるで自分が戦場にいるかのような演出を行ったことで、それまでの戦争映画のシーンとはあきらかに異なる雰囲気の映画になりました。

一瞬油断しただけで、隣にいた人間の頭がなくなっていたり、腕が吹っ飛んでいたり、生きるか死ぬかの差は運でしかない、と思わせる圧倒的な映画です。

 

スーパーエイトでも、爆発につぐ爆発と、子供たちが助かったのか、いったいなにが彼らの生き死にを決定してしまうのか、これは、ファンタジー映画としての要素が強いため、子供たちは酷い目にあうことはほとんどありませんが、その映像的な迫力は間違いがありません。


映像をみるだけで、制作費が大量につかわれているのがわかってしまう。

それこそが、スーパーエイトの見所です。

 

スピルバーグ映画としてみた場合

 

さて、スピルバーグ監督といえば、親子の不和や、大人になれない主人公が重要なテーマです。

ETは、お父さんがいなくて寂しい少年の話ですし、ジュラシック・パークの主人公は、大人になれないために恋人と仲たがいをしてしまっています。


スーパーエイトでは、主人公の男の子は母親の写真がはいったペンダントをもっています。

父親は保安官代理であり、忙しさもあって、子供とうまくコミュニケーションがとれないでいます。


うまくいかない親子が最後には、心が一つになる、という点は、スピルバーグにささげられた点でしょう。


最終的には、二組の親子が一連の事件を通して、それぞれが子供のことを心配し、家族愛が深まるという話になっています。

この場合、あまり、親子がそれぞれ行動しているので、それほど親子の絆は強調されていませんが、子供は子供で、子供たちの世界の中で街を守っていた。

父親父親で、社会の中で街を守っています。

 

ただ、この映画の冒頭では、お互いに親子を大切に思っているということがわかっていない状態であることがわかります。

最終的に、お互いちゃんと大切に思っていることがわかった、ということだけで彼らは絆を深めることができた、ということでいいのではないでしょうか。

 

題名の意味

 

知っている方は知っていると思いますが、スーパーエイトというのは、八ミリフィルムの規格のことです。


この映画では、映画のため、それぞれの嗜好のために頑張る姿が描き出されます。


特に、映画をとる少し太った少年は、町で起こったできごとを利用して映画のカットにいれてみたりと、いい映像をとるためには危険もともなわないのです。

こういった、映画に囚われた人間を描いた作品では、園子温監督「地獄でなぜ悪い」が思い出されるところです。

 

地獄でなぜ悪い

地獄でなぜ悪い

 

 

地獄でなぜ悪いは、いい映画をとるために、ヤクザの打ちいりシーンに乗り込んでカメラをぶんぶん回すということをやってのけたり、何が起きたとしてもフィルムだけは守る、という映画に魂をうった人間の話になっています。

映画に魂を捧げてしまった人間というのは、いかなる偶然もフィルムにおさめたくなってしまう因果な生き物であることが示されており、「スーパーエイト」でも映画にとりつかれつつある少年が描き出されているのが特徴です。

 

ゾンビ愛

 

さて、蛇足になりますが、彼らがとっている自主制作映画「the case」は、実際に街で起こっている事件を簡素化したかのようなものになっています。


刑事が異変に気づき、戦うというざっくりした内容で、いかにも自主制作的な雰囲気がでているのが素晴らしいです。

ゾンビ映画となっていますが、ゾンビ映画は顔にメイクをするだけで製作することができるため、自主制作映画をやる人間にとっては、お手軽且つ効果の高い映画となっています。

一応、作中で、ロメロ化学という言葉がでてきますが、これは、いわずとしれた「ゾンビ」シリーズをつくった監督ジョージ・A・ロメロからとっていることは間違いないでしょう。

 

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スピルバーグ礼賛映画なのに、ロメロまでいれているとは、J・J・エイブラムスもにくいやつです。

 

 

「スーパーエイト」は、迫力のある映像を楽しむだけでも面白いですが、J・J・エイブラムスが影響をうけた作品や監督を知ることで、より面白さを感じることができる作品ですので、当ブログでちらっと紹介した映画をみるだけでも、その印象は大きく変わると思います。

以上、スティーブン・スピルバーグに捧げる/J・J・エイブラムス「スーパーエイト」でした!

 

J・J・エイブラムスを紹介している他の記事は以下となります。

 

 

cinematoblog.hatenablog.com

 

 

 

 

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