三毛別羆事件 千葉真一・真田広之『リメインズ 美しき勇者たち』(1990年)
今回ご紹介するのはこちら、『リメインズ 美しき勇者たち』(1990年公開)。昔はテレビでも放映されていたようですが、最近はやってないみたいです。レンタルでも観られますしDVD自体もそんなに高くないので観ようと思えばいつでも観れる作品となっています。
このページでは本作を、関連作品や元となった事件について触れながら解説していきたいと思います。
三毛別羆事件
日本史上、もっとも多数の被害者を出した羆害事件として有名な三毛別羆事件。
近年も人が熊に襲われる事件はなくならず、その度に振り返られる事件でもあります。
簡単ですがその内容をまとめてみたいと思います。
スポンサードリンク
?
1915年12月9日から14日にかけて事件は起こりました。
北海道苫前郡苫前村三毛別六線沢が舞台となったことからその名がつけられました。
体長2.7m、体重340キロのエゾヒグマが開拓民の集落を襲い、7名が死亡、3名が重傷を負いました。被害者の中には妊婦もいました。
件の熊はマタギによって射殺され、事件は終息しました。
事件に関連した作品の紹介
上記のように多大な被害をだした事件なのでその衝撃は大きく、後に何度も創作の題材となりました。
自分が実際に触れ、良かったものを幾つか挙げてみます。
三毛別羆事件を元にした作品としては最も有名だと思われます。丹念に取材し、ドキュメンタリータッチにまとめられています。その凄絶な描写は震えを誘います。著者は他にも『熊撃ち』という熊とマタギを主題にした作品集をだしています。そちらもオススメです。
・ラジオドラマ『羆嵐』
脚本・倉本聰、主演高倉健という豪華メンバーのラジオドラマ。地元北海道のラジオ局で放送されました。吉村昭の『羆嵐』を原作としています。約二時間という長い作品ですが聴覚のみという限られた感覚に広がる「1915年の世界」は臨場感があります。
・アニメ『ユリ熊嵐』
鬼才・幾原邦彦が羆事件を参考に、「百合」とミックスして作り上げた異色作品。ところどころに三毛別羆事件をモチーフにしたと思われる部分が見受けられます。話自体はあまり関係ありません。
ユリ熊嵐 コンプリートシリーズ / YURIKUMA ARASHI: COMP SERIES
- 出版社/メーカー: Funimation
- 発売日: 2016
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログを見る
・資料本『慟哭の谷』
これは創作物というより情報をまとめた資料集といった感じです。といっても厚くないのですぐ読めます。文庫本もでていますが単行本のほうが写真が充実していた印象です。三毛別羆事件の復元地の写真も載っています。
現地に行ってみた
で、その復元地なのですが現在の六線沢に作られています。元の事件現場そのものに建てられたわけではありませんが、家が再現されたり、羆の等身大の模型があったり、熊の爪あとがついた木があったり、慰霊碑があったりと事件に関連したものがぎゅっと凝縮されています。
私事ですが2015年の夏にこの場所を訪れてみました。現地まではベアーロードという愛称のついた道道1049号線が続いています。
自分たちの他にも何人か来訪者がおり、それも道が整備されたおかげだなと感じました。
木々に囲まれた静かな空間に事件の記憶が立体化されていて、しばらくその静けさの中に身を浸しました。100年前の事件ではありますが、今でも近くに熊がでるようで時を経ても人間と自然の関係性は変わっていないのかもしれないと思いました。
美しき勇者(つわもの)たち
そして肝心の映画です。
千葉真一の唯一の監督作品で、真田広之やヒロインの村松美香をはじめ、JAC(ジャパンアクションクラブ)の関係者が多数出演しています。
本来は千葉真一の盟友・深作欣二が監督する予定もあったそうです。
作品として広大な自然を背景としたアクション映画に分類されます。そこに真田広之とヒロインの微かなメロドラマも入ってきます。
ヒロインは家族を羆に殺され、一人で復讐を誓っています。菅原文太率いるマタギ集団は何度も人命を脅かす熊を討伐する目的で旅を続けます。祭りが開催された日、標的の羆が姿を現しました。真田広之と、熊を追っている村松美香が篭った家が大きな力で揺さぶられます。二人は協力しながら最後の戦いに挑みます。
アクションという面を見てみると確かに迫力があります。予告編をみればすぐわかると思います。
肝心の熊がところどころ着ぐるみ丸出しなのをどう評価するかによって完成度に関する意見は分かれそうですが…。
しかし、なかなか映像化の難しいテーマに果敢に挑戦した千葉氏をはじめとする製作陣がまさに勇者(つわもの)といえるのではないでしょうか。
余談ですが、本作のテーマソングは真田広之が作詞作曲しています。これが意外と(?)いい曲なんですよ。