シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

キャリーもびっくり! 小川範子主演『魔夏少女』(1987年)

今回は特別篇として、TBSドラマ『魔夏少女』(1987年)を取り上げてみたいと思います。

 

ちなみに本作はDVDは作られてはいませんが(VHSは発売済み、当然絶版)、GYAO!ストアで8日間432円で楽しむことができます。視聴しやすいので非常にありがたいです。ふとした拍子に配信が終わることも考えられるので観たい人は早めに視聴しておきましょう!

 

魔夏少女 [VHS]

魔夏少女 [VHS]

 

 

小川範子は血に染まる

 本作は小川範子原田美枝子出演のジャパニーズホラーの先駆けともいえる作品です。

二人は子と親の関係で、それ自体がストーリーの中軸を担っております。

小川範子にとっての父親として三宅裕司も出演、妹も加えて、四人家族です。

 

で、どんな話かというと、思春期に差し掛かり、難しい年頃の少女(小川範子)が突如超能力を発揮。それは相手を出血させるという非常に攻撃的なもので、次第に彼女はその能力を自由自在にコントロールできることになります。

様々な事件を密かに巻き起こし続ける少女。

ある日、近所に住む怪しい学生(永瀬正敏が好演)に襲われそうになった少女は学生を超能力で惨殺。

男の血を浴びて血まみれの少女は、そのすぐ後に母親(原田美枝子)に見つかり、二人だけの秘密ということで事件は処理されます。

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単身赴任中だった父親とともに家族全員で引っ越し。その土地で、両親は大学時代の同級生の女性と再会します。実は少女の知らない秘密が両親とその女性にはあり、そのことがきっかけとなり、全てが奈落へとすべり落ちていくことに…。

 

少女×超能力×ホラー

少女が超能力を発揮する、という設定はよく聞く話ですね。ポルターガイスト現象の現場に少女がいた、などといった例もありますし、映画の世界でも『エクソシスト』(1973年)は少女に悪霊が乗り移り、デ・パルマ監督の『キャリー』(1976年)は厳格な母親の元に育った内気な少女が実はとんでもない能力を持っていた、という話です。

 (相棒の皆無が以前、新旧『キャリー』について記事にしております)

cinematoblog.hatenablog.com

 

 母親と少女の関係、という点で『キャリー』と『魔夏少女』は近しい作品ともいえます。少なくとも『魔夏少女』は『キャリー』を意識していることは間違いないでしょう。

 

特に象徴的なのが、『キャリー』では映画の冒頭にでてきたシャワールームでの初潮のシーン。

それが『魔夏少女』においては、学生惨殺事件の後の、少女の浴びた血を洗い流す母親という構図に変化します。この場において母親は少女の力を認識し、それを世間に隠すことを決意します。共犯と化したわけです。

 

この母親と少女の関係性に注目して両作品を見比べるととても面白いと思います。

実はラストも似て(…これ以上はネタバレになりそうなのでカット!)。

 

で、90年代あたりからジャパニーズホラーがブームになる、その何歩か手前の隠れた名作として『魔夏少女』は一部のファンに記憶されることになったのですね。

 

それは主演の小川範子の力が大きいかと思います(当時、13・4歳!)。一見、ただの美少女に見える彼女ですがその演技力や陰のある表情により、いかにも超能力使いそう系なトンデモ少女として説得力のある佇まいをしています。

物語の前半は駄々っ子で構ってちゃんな部分がクローズアップされ、それが超能力の発動に関わっているのですが、後半の完全に力をコントロールできるようになり、そしてその力を使うことに躊躇いを覚えない様子は、彼女でないとうまく演じきれなかったでしょう。

 

母親は少女を世間から隠そうとするのですが、その少女は母親にまでもその超能力を使おうとする…。その眼差しの何と美しいことでしょうか!

 

 

『魔夏少女』感想・評価まとめ

そんなわけで簡単に振り返った本作ですが、実は脚本家の伴一彦氏のサイトで脚本を読むことが出来ます。

こちら→魔夏少女のシナリオ

先ほどちらりと内容を確認しましたが、シナリオでも読ませる内容となっております。

 

ちなみに本作の演出をつとめた吉田秋生はこの18年後に主演の小川範子と結婚します。

 

ホラー、オカルト、サスペンス、スプラッターなどの様々なブームを取り込み、なおかつ、小川範子原田美枝子という世にもまれな美形な親子の狂った愛情の世界を描写する、どの作品とも異なる個性を持つ本作。この夏に観てみるのも一興かと思います!

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