シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

深作欣二×北大路欣也の隠れた名作! 『資金源強奪』(1975年)

知名度はそこまで高くはないかもしれませんが、まぎれもない傑作をご紹介させていただきます。

 

深作欣二(本作ではひらがなの「ふかさくきんじ」名義)監督、北大路欣也主演の『資金源強奪』です!

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現金に体を張れ! 強盗×ヤクザ映画!

清元(北大路欣也)・・・タケシ。8年間服役した後、組から金を強奪することを計画。

静子(太地喜和子)・・・タケシの女だったが、服役中に国吉の情婦に。

小出(室田日出男)・・・通称おっさん。会社の経営難から強盗計画に乗る。

別所(川谷拓三)・・・通称テツ。タケシとは刑務所仲間。爆弾作りを担当。

羽田(安部徹)・・・羽田組組長。

国吉(名和宏)・・・羽田組幹部。清元と対立する。

能代文明(梅宮辰夫)・・・中年刑事。自分の娘ほどの恋人を持つ。停職中の悪徳刑事。

 

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大阪の羽田組の組員である清元は対立するヤクザ組織の親分を殺して、8年間服役します。彼はこの間にある計画をひそかに練り上げます。

敵対していたはずのヤクザ組織と羽田組は手を組むことを決定しました。その盃事の花会(賭場)を襲撃して賭け金をまるごと奪おうと考えたのです。

刑務所内にいながらも外の様々な情報が入ってくるので、清元は出所の日を静かに待ちます。

でっかい花火をあげようぜ

 出所を迎えた清元は刑務所仲間のテツ、そして経営難に苦しむ商人のおっさんを仲間に引き入れ、大津・雄琴温泉で開かれる賭場襲撃の打ち合わせを行います。

 

催涙弾を使い、見事3億5千万の現金をゲット。湖を利用して無事逃走する三人。自分を都合よく使った羽田組の鼻をあかします。

 

大量の現金にも冷静な清元。仲間二人に事前に約束していた金(全体の額からするとわずか)を分け与え、本人は数年間残りの金を寝かせて、ほとぼりがさめるのを待つつもりです。

 

一方、羽田組は、花会に参加していたほかのヤクザ組織から合わせて5億円の損害を請求されます。被害額を盛られてしまったのです。メンツを考え、その金額をのむしかない羽田。

襲撃犯に心あたりはありませんが、かといって警察に被害を届けるわけにもいかず、窮した羽田組は停職中の悪徳警官、能代に話をもちかけます。

 

能代は報酬のために犯人を捜すことを了承。現場から新聞に書かれたメモを発見。これがボートレースに関するものだと気付いた能代競艇場で金遣いが急に荒くなった男に目をつけます。

 

清元は羽田組にヤクザをやめて静子とともに九州に向かうことを告げます。ちょうどその頃能代に捕まったテツが組長の前に差し出されます。

 

累が及ぶことを恐れた清元はテツがリンチされている現場に潜入し、ひさかに助け出そうと試みますが、その前に覆面をした男が現れて羽田組員を襲撃し、テツを連れ去ります。その男を追跡しようとする清元でしたが、因縁のある羽田組員に見つかってしまいます。

賭場を荒らしたのは自分だと認め、トランクに金があることを伝える清元。その隙をついて清元は銃撃し瀕死の重傷を負わせ逃げ帰ります。

仲間割れ! 迫りくるヤクザ! 大金の行方は?

 テツは怪我を負いながらも能代の運転する車から逃げ去り、おっさんと合流。どちらも金はほとんど使い果たしており、清元が持っている残りの金を奪うことを計画します。

 

清元は静子が国吉の女になっていることに感づいており、国吉の襲撃を逃れた後に、自分を裏切ろうとした静子にこう言い放ちます。

「おなごが8年も一人でじっと待つことはできないだろう。それについては文句はいわない。そもそも俺は最初から誰も信用していない。偽造パスポートで一人海外に飛ぶつもりだ」

静子と九州へ行くと告げたのも組からの追撃をかわすカモフラージュだったのです。

そんな清元にテツから電話がかかってきます。

 

あくる日、清元はテツに呼びだれた喫茶店に向かいますが、能代がテツらを尾行していることに気付きます。

 

人を待っていた見知らぬ女を無理やり引っ張って自分の車に乗せ、ホテルへと逃げ込みます。テツとおっさんはそんな清元の車のトランクからアタッシュケースを奪います。おっさんが抱えて逃げ出そうとしますがトラックにはねられ命を落としてしまうのです。むなしく舞う、新聞紙を切りそろえただけのニセの札びら。清元がフェイクのケースを用意していたのです。

 

窮地を逃れた清元は連れまわしてしまった女に高価なブローチを詫びとして買い与えます。女はこんな高価な物、いただけませんと断りますが、清元は取っとけと押し付けて別れます。これが伏線になっていることをこの段階では誰も気付かないでしょう。

大金を抱いて飛べ! 

その後、コインロッカーに隠していた金をだそうとする清元。そこに能代が現れます。観念する清元。金は能代が回収し、羽田組へと持っていかれます。

 

しかし羽田組は盗まれたのはあくまで五億円だと主張。能代は一切手をつけていないと主張しますが、逆に自分が警官をついにクビになったことを知らされ意気消沈。

 

自分の家へ戻ると若い恋人と清元が待っていました。

羽田組の抱える大金を奪取するという目的のもとに清元と能代は手を結ぶことをきめるのです。

清元は女よりも金(逃亡し、悠々自適に暮らすため)

能代は金よりも女(金はあくまで恋人の求めるマンションの資金にするため)。

という感じで最終目的は異なるわけなのですが、お互いの能力を認め合ったわけですね。

 

清元は組に乗り込み、金を奪います。当然、羽田組はそれを阻止しようとしますが、通天閣の上からスナイパー能代が組員を次々と射殺。

銃の腕前に絶対の自信を持つ能代のすごすぎるファインプレーにより、清元は大金を袋に詰め込み、能代と合流し、かつて賭場襲撃前に使っていたアジトへ向かいます。

 

見事に金を奪った二人ですが心の中では当然お互いを信頼していません。

というわけでアジトの前で二人の金を巡る戦いが始まります。

と、その時火炎瓶を持ったテツが小屋からでてきます。

おっさんの復讐と金を奪うためです。

火炎瓶を利用し車を奪うテツ。

しかし、銃で撃たれ小屋に衝突し、むなしく死亡します。

束になった金が散らばる中、能代は清元の運転する車にひかれます。

「女には旅にでたとでもいってくれ・・・」

といかした遺言を残す能代

清元をそれをみて、残りの金とともに去ります。

その後、倒れた能代の身に意外な展開が起こるのですが、それは実際に映画を観て驚いて下さい。

 

そして清元は偽造パスポートを使い、ほとぼりをさますため飛行機に搭乗しようとします。しかし、そのカウンターにいたのは以前無理やり引っ張りまわしたあの女性!

胸元にはあのブローチが輝いています。

この女性が通報すれば清元の計画は全て水の泡です。

清元は隠しもっていた拳銃を強く握ります。

そして、物語はラストのラストを迎えます。

果たして清元は無事逃げ切ることはできるのでしょうか?

その結末はぜひ自身でご覧下さい!

 

 『資金源強奪』感想 まとめ

 この映画はなんといってもだれるシーンがないところが素晴らしいです。非常にテンポ良くストーリーが続きますし、先の展開が最後の最後まで読めません。これほどの傑作なのに知名度が低いのはいったいなぜでしょうか…。

 

BGMもいいし、ちょっとだけ登場する赤いベストを着る松方弘樹や、山城新伍など嬉しい出演者もいます。

 

なんといっても、ちっぽけな存在であるチンピラが、8年を刑務所で過ごすことになったことの復讐を果たそうと大きな存在相手に仕事をしようとする設定がいいですね。

 

また、自分以外はたとえ女でも強盗仲間でも一切信じないというドライかつ合理的、さらにクールな考えの主人公像は任侠映画や実録ものにはなかなかいないんですね。それを見事に演じきった北大路欣也の演技力(と素晴らしい肉体)にアッパレです!

 

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