シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

電子のやくざ ~電子書籍で見る仁義なき戦い~

仁義なき戦い』一作目が封切られてからすでに40年以上、たちました。

 

いまでもレンタルショップにいけば上記シリーズをはじめ、ヤクザ映画/仁侠映画は必ず置いてあります。

2015年には高倉健主演『山口組三代目』、菅原文太主演『山口組外伝 九州進攻作戦』などがDVD化され、2016年にも安藤昇主演の映画がソフト化されるなど、名優が鬼籍に入ったとしても作品は生き残る/よみがえるという状況にあります。このジョンルのしぶとさ/根強いファンの存在を感じさせます。

 

そんな中、不況といわれている出版の世界においてもヤクザ映画をめぐる言説は復活を遂げつつあります。

絶版となり、希少となったヤクザ映画関連の本が電子書籍となり、手軽に読めるようになったのです。なんと便利な世の中になったのでしょうか。

本稿では、オススメの電子書籍をコメントを交えながら取り上げていきたいと思います。

 

電子書籍紹介!

 

 

 

飯干晃一著の『仁義なき戦い』シリーズの原作本です。映画を観ただけでは分からない部分を補完することができます。こちらでは映画の登場人物が本名で躍動します。

抑えた描写、事実関係の羅列が続くので小説というよりはドキュメンタリータッチで広島抗争が展開されていきます。

映画ともシナリオとも違う、オリジナルの『仁義なき戦い』の世界が広がっているので手に入れやすくなったこの機会に挑戦してみるのもいいでしょう。

 

 

仁義なき戦い』1作目から4作目からの脚本を担当した笠原和夫の同作のシナリオ集。映画ではカットされた部分、変更された部分も読むことができます。映画を繰り返し観た人でも、これから観る人でも楽しめる魅力的な本です。

何といってもその素晴らしいセリフの数々を自分のタイミングで読み解くことができます。一人でセリフをぶつぶつ読み上げているだけで、気分はもう抗争、という感じです。

 

 

さて、そんな笠原和夫がどうやって『仁義なき戦い』ワールドを作り出したか…。その全てがつまった非常に熱い/厚い一作。

絶版になって中古での価格が8000円以上にもなっているので、3000円以下で手に入る電子書籍版は非常にありがたい存在。

鵺のように複雑怪奇な広島抗争をまとめ上げる力量は見事というほかありません。これぐらいの熱量で物事にあたればたいていのことは成就するのではないか、という自己啓発本的役割すら担えると思います。

重く、大きい本を置いておくスペースがないという方にもオススメです。

 

破滅の美学 ヤクザ映画への鎮魂曲

破滅の美学 ヤクザ映画への鎮魂曲

 

 

こちらは直接、『仁義なき戦い』シリーズとは直接関係あるタイトルではありませんが、笠原和夫がヤクザを取材して得たエピソードを中心に編まれた一冊。一筋縄ではいかない男たちの独特の世界を笠原氏のテクニックに溢れた筆致で描き出していますので、単純に読み物として面白いです。

こちらの本も一時期プレミアがついていました。

同じ著者による『「妖しの民」と生まれきて』や『笠原和夫 人とシナリオ』、『昭和の劇ー映画脚本家・笠原和夫』も絶版になっているようなので近い将来の電子書籍化が待たれます。

 

最後に・・・

 

仁義なき戦い』シリーズがテーマとして掲げた暴力は根絶されたわけではありませんし、幾重にも姿を変えて私たちの前に提示されています。

そんな時代であるからこそ、今一度、任侠/ヤクザ映画を見つめなおすことが必要なのではないでしょうか。今回は、そのお供となるような電子書籍を紹介させていただきました!

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