シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

スカイウォーカーを探せ!/スターウォーズ エピソード7「フォースの覚醒」

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2016年も始まってしまいましたが、みなさん、スターウォーズエピソード7「フォースの覚醒」はご覧になりましたでしょうか。

ネタバレもちらほらでてきている昨今ではありますが、極力ネタバレはしないようにしながら、でも、見たときに考えてしまう違和感を補足。

考えるきっかけになるよう、感想を書いてみたいと思います。

 

まったく情報を入れたくない、という方は別ですが、核心にふれなければネタバレしていてもかまわないという人は、是非、記事をご覧頂いた上で、劇場に足を運んでみてください。

 

まったく情報をいれていない人からすれば、映画開始冒頭の一行目からびっくりしてしまうことになりますが、果たしてこれをネタバレというべきなのかは、考えどころです。

 

では、以下より核心にふれず、一応、ネタには触れながら話を進めてまいりたいと思います。

 

 

スカイウォーカーが消えた!?

 スターウォーズシリーズといえば、物語冒頭でデカデカとあらすじが宇宙の奥へと消えていくのが定番です。

エピソード7でもその紹介文が流れるのですが、その一行目から度肝を抜かれます。

ルーク・スカイウォーカーが消えた」

しかも、帝国軍に続いて、「ファースト・オーダー」なる組織があとを継いだらしく、普通に反乱軍と闘っていることが示されます。


エピソード6で、帝国軍の最大の兵器である第二デス・スターが破壊され、ダースベーターと銀河帝国初代皇帝ダークシディアスが倒されたことにより、帝国軍は消失したのだと思っていました。


エピソード6のラストシーンでは、全宇宙が花火をあげて喜ぶ、というまさに大団円といえる終わり方をしたのに、現実はそういうわけにはいかなかったようです。


さて、エピソード7がわかりやすいのは、最後のジェダイであるルーク・スカイウォーカーをみんなが探す、ということにしていることです。


物語の目的は端的に示され、謎もまた考えつきます。

なぜ、ルークは姿を隠してしまったのか。

そんな思いを抱きながら、物語は殺戮が行われる戦闘へと入っていきます。

 

自我に目覚めたストーム・トルーパー

スターウォーズ エピソード2「クローンの攻撃」で物語の設定上、はじめて登場したストーム・トルーパー(旧 クローン・トルーパー)ですが、今回は、ストーム・トルーパーの一人が大活躍します。

 

ストーム・トルーパー

ストーム・トルーパー

 

 

冒頭の戦闘シーンで、死にかけた仲間の血がヘルメットにべったりとつくところが大写しになります。白いアーマーに真っ赤な血は、子供から大人までみられるスターウォーズからすると珍しい光景です。


そして、血をつけた彼は、あきらかに他のストーム・トルーパーとは違う動きをはじめるのです。


まるで、クローンとして自我のない存在として描かれてきたストーム・トルーパーが、自我を持って、正確には、自分自身の行動に対して疑問をもったように見えます。


戸惑っている姿がヘルメットごしでもわかる演技が素晴らしいです。


彼の名前は、FN-2187。


その識別番号をつけられた彼は、集団の中で生活する我々そのものにも思えます。


ストーム・トルーパーは、エピソード2で、一人の男を複製してつくられた集団であったはずですが、物語が進むにつれて、一般の人間も「オーダー」と呼ばれる教育プログラムを受けて、立派なストーム・トルーパーになれるシステムができていたようです。


ファースト・オーダーにつかまった反乱軍のエースパイロットと、ほのかな友情が芽生えたFN-2187は、彼に「フィン」という名前をもらいます。


彼が人間になるきっかけが与えられたという点でも、非常に重要なシーンです。


自分の運命に気づかず、集団の中に埋没していた彼が、反乱軍と共に闘うことで、自らの運命に立ち向かっていく、というのが、エピソード7のもう一つの物語になっていて、見所です。

 

強い女性主人公 レイ

今作の主人公であるレイは、スターウォーズシリーズでも、闘う女性としてのポジションで登場します。


スターウォーズシリーズでは、ヒロインは守られてばかりではありません

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キャリー・フィッシャー演じる、レイア姫は、物語のはじめこそ捕らわれの姫でした。

しかし、ひとたび武器をもてば、敵を躊躇なく撃ち殺し、将軍となって指揮をとる勇ましき姫君なのです。


また、エピソード1ででてくるナタリー・ポートマン演じるパドメもまた、怪物相手に傷つけられても、まったく怯まず戦う、強き姫です。


スターウォーズでは、ヒロインだってバリバリ闘う。

その意味で、脇役としてのヒロインはいたものの、主人公として大々的にでてきたレイは、非常に興味深い存在です。


アナと雪の女王」などで女性のみでハッピーエンドを迎えるなど、ディズニーが買収してつくったということも影響しているのか、守られるだけではない女性として、レイは現代社会を写す存在となるキャラクターなのは間違いないでしょう。

 

ストーム・トルーパーだったフィンが、やたらとレイの手を握ろうとしてきます。


一応、女性はか弱いから守らなければ、っていうことで逃走中に手を握ろうとしてくるのですが、レイはそれを振り払います。

 

「手を握らないでよっ!」


彼女は、一人であらくれものたちがいる惑星ジャグーで暮らしていた女性です。

その彼女の孤独と強さ、そして弱さは、惑星ジャグーでの生活をみるだけでわかるようにつくられています

そんな彼女に他人の助けなどいらないのです。
ですが、そんな彼女が、誰かに頼ったりしていく、その過程が少しずつ描かれるのもポイントといえるでしょう。

 

スター・ウォーズ フォースの覚醒 レイのサバイバル日記

スター・ウォーズ フォースの覚醒 レイのサバイバル日記

 

  

音楽で考えるレイとルークの関係

 

物語をみているとまっさきに考えるのは、レイは、ルークの血縁か? といったところでしょう。

特別エピソード7では言及されませんでしたが、彼女とルークに関係があるだろうことは、BGMでわかります

 

スターウォーズシリーズは、各キャラクターにテーマ曲が設定されています。


メインのキャラクターのテーマ曲が流れることで、そのシーンがそのキャラクターと関係のあるシーンだというのがみなくてもわかってしまうのです。


ダースベーダーのテーマは、聞いたことがない人のほうが少ないぐらいでしょうが、あの曲がかかると、ダースベーダーがやってくる、とわかってしまうように、曲とシーンというのが密接に結びついているのがスターウォーズでもあるのです。


特に面白くつかわれているのが、スターウォーズエピソード2「クローンの攻撃」です。


エピソード1は、もちろんダースベーダーの曲なんて流れません。

ですが、エピソード2で、とある事情から自分の暗黒面に気づいたアナキン・スカイウォーカーが、パドメの前で自分の心情を吐露するシーンで、曲がかかるのです。


そう、ダース・ベーダーの曲が。


その瞬間、彼の中に、エピソード4でおなじみ、ダースベーダー卿としての彼が、そこではじめて生まれたということが、音楽を通して明白になるのです。

 


さて、エピソード7に戻りますが、レイは何度か自分自身のフォースに気づきます。


特に象徴的なのが、今回の敵であるカイロ=レンとライトセーバーで闘うシーンです。

ライトセーバーを重ねて力で押し負けそうになったとき、「フォース」という言葉に反応して、彼女の顔つきが変わります。


そして、流れてくるのです、ルークのテーマ曲が。


レイが惑星ジャグーで待っていたのがルークなのかはわかりません。


ですが、彼女は、ルークを継ぐものになる、ということがテーマ曲の存在で暗示されているのです。ここで、もしレイのテーマ曲がでてきてしまったなら、このような演出はできないでしょう。


あるいは、彼女自身が、ルークに捕らわれてしまっている存在ということを意味しているのかもしれません。


それゆえに、エピソード8以降には、彼女が、自分自身の運命と向き合ったときに、彼女のテーマ曲がはじめて流れることになるのではないでしょうか。

 

スター・ウォーズ/フォースの覚醒 オリジナル・サウンドトラック(初回スリーブ仕様)

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今回のダースベーダーはわざと若造?

 

ダースベーダー卿を思わせる黒いヘルメットをつけた男、カイロ=レンがエピソード7における最大の敵として、レイたちの前に立ちふさがります。


しかし、彼はダースベーダーと違って、実に幼いキャラクターとして描かれます。


小物すぎて、敵としてどうだろうか、という話もあるようですが、今回の新キャラがよくも悪くも、わざと子供として描かれているように思いました。


特にカイロ=レンは、部下が失敗すると、コントロールルームのような場所を、ライトセーバーでむちゃくちゃに破壊します。


また、捕らえていたはずのレイが逃げたことを知って、「衛兵ーーー、衛兵ーーーっ!!」と怒りながら、ライトセーバーであたりを壊します。


ダースベーダーのような強くて黒くてカッコいいものを期待していると、子供の癇癪にしか見えないその行動に、がっかりすることでしょう。


そして、廊下を二人のストーム・トルーパーが歩いているのですが、そのカイロ=レンの声を聞いて、駆けつけるのかと思いきや、くるりときびすを返して、去っていきます。


この人望の無さ。


もし、ダースベーダー卿であれば、そんな動きを察知しようものなら、その瞬間に殺していたはずです。

でも、カイロ=レンは物は壊しますが、率先して仲間を殺したりはしません。


彼は、子供なのです。


そして、その仮面の中の顔は、いかにもな悪人顔ではなく、どちらかというと、影のある男なのです。


「J・エドガー」や、スピルバーグ監督「リンカーン」などに出演したアダム・ドライバーが演じています。

その陰のある風貌と、子供にしか思えない行動とあいまって、彼が親の愛情に気づかず、現実から目を背けてしまう現代の若者層をあらわしているようにも見えるのです。

 

しかし、彼は、フォースの力で、人の心を読み取ることができる非常に優れたフォースの持ち主であることもまた明かされます。

人の心が判るからこそ、彼はダークサイドにいってしまったのではないか。

そんな現代における問題もまた内包しているキャラクターこそが、新たなる敵、カイロ=レンなのです。

 

その彼が、エピソード8以降で、どのような変貌を遂げるのか。敵となるのか味方となるのかが見所になってくるところです。

 

 

バトン(ライトセーバー)を受け取れ!

なるべく物語そのものは、映画をご覧いただいたほうがいいのですが、各所で指摘されているところではありますが、エピソード7の、物語としての構造は、エピソード4と酷似しています。

 

エピソード4は、田舎の惑星タトゥイーンで自分の将来に嘆く青年が、帝国軍を倒すための情報をもったドロイドR2D2と出会い、ベン=ケノービやハン=ソロの助けを借りて、帝国軍の兵器デス・スターを破壊する。


という物語でした。


エピソード7もまた、廃品集めぐらいしかない惑星ジャガーで、レイが、重要な情報をもったドロイドBBー8と出会い、フィンやハン=ソロと共に、ファースト・オーダーの兵器スターキラーを破壊する。


という物語です。


大枠は同じです。


これは、わざとやっていると考えたほうが自然でしょう。

 


エピソード7では、メインのキャラクターが3人でてきます。


レイ。

フィン。

そして、カイロ=レン。


この3人は、いずれも完璧ではありません。


レイは、自分の力と向き合うことができません。
フィンは、自分自身の出生に謎をかかえています。
カイロ=レンは、親たちとの関係がこじれています。

 

その彼らが、エピソード4に酷似したストーリーの中で、親世代から子どもの世代へと物語を繋いでいく、そんな物語にするために、あえて始まりの物語ともいえるエピソード4と似た設定にしたのではないでしょうか。


チューバッカと共にレイが出発するシーンもまた、物語をうまく次世代に渡そうとする意図が伝わってくるように思います。

 

また、劇中ででてくるライトセーバーは、象徴的な使い方をされています。

はじめ、レイはライトセーバーを受け取ることを拒みます。

ですが、それは人の手を渡りながら、再びレイのもとへとやってくることになるのです。

 

スターウォーズシリーズは、親と子の関係が描かれた作品です。


1~3は、アナキンがダースベーダーになるまでを描き、4~6では、ルークが成長し、父を解き放つ物語になっています。


親と子の物語がスターウォーズにとって大きなテーマの一つになっていることを考えれば、8以降で行われる物語もまた、見えてきそうな気がします。

 

スターウォーズは、今後もますます盛んになってくるコンテンツになるでしょうから、まだ見ていないみなさんも、もう見た皆さんも、色々と考えをめぐらせながらみることで、新たな発見があるかもしれません。

 


以上、「スカイウォーカーを探せ!/スターウォーズエピソード7「フォースの覚醒』」でした!

 

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