シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

駄セーターからはじまる恋/ブリジット・ジョーンズの日記

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ロマンティック・コメディとして絶大な人気を誇る「ブリジット・ジョーンズの日記」ですが、「ブリジット・ジョーンズの日記」の三作品目の撮影が10月から行われているそうです。

 

多くのファンがいるブリジットジョーンズの魅力と、近年流行つつある駄セーターに注目しつつ、ブリジットジョーンズの日記を振り返ってみたいと思います。

  

駄セーターとは

 近年、ネット界隈などでじわじわと人気がでてきているセーターがあります。


欧米などは、おばあちゃんからもらったりするダサダサな手編みセーターなどがその代表とされており、「アグリー・クリスマス・セーター」と呼ばれています。


2010年あたりからセレブたちの間で、そのダサさ加減が逆に良い、と流行。近年においては、日本でも注目されてきたということのようです。


ちなみに、以下のようなものとなっています。

 

  

ブリジット・ジョーンズの日記」においては、主人公であるブリジットが、コリン・ファース演じる弁護士であるマークと初めて出会ったときに、駄セーターが使われます。

 

これが、映画内において、極めて重要な意味をもちます。


ブリジットは、母親が主催するターキー・カレーパーティーで、コリン・ファースの後姿をみたときに、恋に落ちそうになります。

しかし、振り返ったコリン・ファースの姿をみて、「無いわー」と却下。


その理由が、駄セーターを着ていたから、なのです。

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冒頭でいきなり発生するイベントではありますが、映画を象徴する重要なシーンになっています。


一つは、ブリジットとマークの運命的な出会いが、駄セーターによって阻害されたことで、はじまるはずだった運命的な恋に歯止めがかかってしまったことです。

 

ここで、駄セーターを着ていなければ、ブリジット・ジョーンズの日記は開始10分以内にハッピーエンドで終わっていたことでしょう。


二つ目としては、駄セーターを着ていることで、コリン・ファース演じるマークの人柄がわかるということです。

 

イギリスにおいてしても、駄セーターはダサいわけです。

ですが、駄セーターは、だいたいがお母さんや、おばあちゃんが手編みしてくれる大変ありがたいものでもあるのです。

子供にとっては、ありがた迷惑であったとしても。

 

もちろん、市販もされていますが、バツイチ独身の弁護士で、英国紳士たるコリン・ファースが、ブリジットの母親が開いたパーティーとはいえ、あえて駄セーターを着ているのは、それが母か祖母のためであるのは間違いありません。

 

一応、後に「あのセーターはなかったよ」とか本人も言っていましたが、駄セーターを着ているというだけで、彼が家族想いの男であることもわかってしまうのです。

 

チャーミングは憎めない?

 

三つ目は、ブリジット・ジョーンズが、人を駄セーターで判断してしまう女性だということがわかってしまうことも、ポイントです。


シナリオ的に考えれば、ブリジットが人を外見でしか判断できない、少なくとも一面的にしか人を見ることができない、という欠陥を抱えているということになります。


その欠陥を埋めるための物語である、というのが物語りの大きな流れとなるのが、駄セーターのくだりでわかってしまうのです。


だからこそ、「ブリジットジョーンズの日記」は、駄セーターが重要なアイテムであり、この映画がヒットしたことで、駄セーターも注目を浴び、アグリー・クリスマス・セーターがダサかっこいいアイテムになる布石をつくりだしたといえるのです。


ではなぜ、この物語が、そこまで人気になったのか。


その一番の理由は、ブリジット・ジョーンズの人柄のためでしょう。

32歳で独身。

タバコは吸うわ、ダイエットには挫折する。

恋はしたいけれど、それ以上に、女友達やゲイの友人との集まりを優先してしまう。


ドジだけれど、明るく前向き。

決して、完璧でもなければ、美しくもない。でも、現実に存在している我々は、必ずしも毎日目標のために努力できるわけではないのです。


俗に言われているのは「等身大の独身女性」を描いたことが重要とされています。


たしかに、ブリジットはチャーミングという意外に形容が見当たらない雰囲気をもっています。

決して美人ではありません。


もともと綺麗ではあるものの、ブリジット演じるレネー・セルヴィガーが、映画のために体重を増やしたということもあって、わざと美人なメイクなどはせず、見た目の美しさを強調しないつくりになっているのが重要だと思われます。


角度によっては、もともとも美しさが見え隠れするのですが、その形容しがたいチャーミングさが、ズボラだけれど憎めないキャラクターをつくりだしています。

 

 

コリン・ファースは階級社会を乗り越える

 

それなりに知られていることではありますが、イギリスという国は、階級社会というものが根強く残っています。


しかし、階級社会があるからこそ、その間で、階級を超えることへの憧れや、階級をぶちこわそうとする流れがあったりするのは、ビートルズがイギリス発祥であることとも無関係ではありません。


上流階級が存在するからこそ、下流がよく見えたりするということもあります。


スパイスガールズの代表曲の一つ「wannabe」のPVでは、スパイスガールズたちが歌いながら、紳士淑女のパーティの中に入り込んだりするシーンがあります。

上流階級をぶち壊すことで風穴を開けるなんていうことも、イギリスでは伝統的に、そして、現在においても続いている表現の一つでもあるのです。

 


さて、「ブリジットジョーンズの日記」にあたっては、コリン・ファース演じるマークは、どう見ても上流階級の人です。


弁護士であり、知的な人たちとパーティーをして、知的な話題で盛り上がる。


しかし、自由奔放なブリジットとの出会いによって、彼は階級社会を踏み越えて、ブリジットとの恋に踏み出していきます。


階級社会というイギリスの伝統的な表現の上に成り立っているからこそ、ブリジットとの恋愛がより感動的に見えてくるのです。

 

若干横道にそれますが、話題作に次々とでているコリン・ファースも、ブリジット・ジョーンズでもその名を知られますが、そのあとも代表作には事欠きません。

紹介するまでもないかもしれませんが、「シングルマン」では自殺をしようとする教授を演じ英国アカデミー主演男優賞、一番有名なのはアカデミー賞主演男優賞を受賞した「英国王のスピーチ」で、知名度をより磐石なものにしました。

 

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2015年には、秘密のスパイ組織が活躍する「キングスマン」でも大ヒットを記録し、ますます活躍が期待される俳優です。

  

ありのままで

ブリジットのチャーミングさの理由の一つには、彼女自身が飾らない性格だ、ということがあげられます。


劇中では、何度も「Just the way she is」という言葉が、仲間たちから連呼されます。


「ありのままで」と訳されるこの言葉ですが、近年においては2013年公開の超大ヒット作品「アナと雪の女王」でも、「let it go」がありのままでと訳されましたことは記憶に新しいと思います。


彼女は決して飾りません。

たしかに、胸元の開いた衣装を着てみたり、おしゃれを頑張ったりしますが、どれも失敗してしまいます。

 

背伸びすると必ず失敗する、というのがある種の定番となっています。

ただ、その代わりに、彼女が飾らないでいるシーンでは、うまくいくのです。


第二作目の「ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月」においても、びしょ濡れになったジョーンズが、タクシーのおじさんを待たせて服を買おうとするのですが、たまたま拾っただけのタクシーのおっちゃんが、ブリジットのために「それは似合わないな。それならバッチリだ」みたいに、一緒になって悩んでくれます。

ブリジットは、たしかにドジもしますが、誰にでも分け隔てなく接して、思ったことはきっちり口にする。

その「ありのまま(Just the way she is)」こそが、彼女自身の魅力であり、その姿にみんなが引かれてしまうのが、映画の全編を通して描かれています。

 

等身大と、その共感性

 

また、本作品では女性に限りませんが、独身の人間の肩身の狭さも語られています。


ターキー・カレーパーティでは、お尻を触ってくる叔父さんがいるのですが、ブリジットの心の声でも「独身にとって一番いやな質問をしてくる」といって、性生活はどうなんだ、とか、結婚しないのかと聞いてきて、ブリジットと同じ立場の人たちは、その居心地の悪さに共感することでしょう。


ブリジットの友人たちとの関係も、実に共感したくなる部分があります。

男も混じっていますが、ブリジットは何かあると女子会を開きます。

タバコをふかしながら、酒を飲み、上司の男といい仲になったら相談。コリン・ファースと仲良くなったら相談。

 

その姿は、東村アキコ氏の漫画「東京タラレバ娘」を読んでいる方であれば、一発で想像していただけると思います。


東京タラレバ娘は、30代を過ぎた女子たちが、夜な夜な何かあるたびに女子会を開き、男の話や仕事について愚痴るという物語です。

酔っ払って、追い詰められてくると、彼女たちの前に、タラとレバーが現れて、彼女たちに説教したりするところが、恐ろしくも面白いです。

ここでは、男がらみのことがあれば、すぐに相談してしまうことで、誰かを傷つけたりしてしまうことを描いたりしていて、痛々しいですが面白いです。

 

東京タラレバ娘(1) (KC KISS)

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話がそれましたが、ブリジットジョーンズの日記は、独身女性の誰しもがもっている指摘されたくない部分を見せながら、「ありのまま」の大切さや、見た目や立場、そういうしがらみを一切気にせずに人と向き合うことを伝えてくれる、明るく前向きになれる映画です。

 

駄セーター映画の金字塔


ロマンティック・コメディなので、あえて結末もちらっと書きますが、駄セーターによって止まった恋は、駄セーターをもって再び始まります。


そして、二作目である「ブリジットジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月」もまた、駄セーターから物語が始まります。


小道具に注目することで、映画の見え方もかわってみえると思いますので、気になった方は是非、クリスマス前に見てみてください。


以上、「駄セーターからはじまる恋/ブリジット・ジョーンズの日記」でした!

 

クリスマス映画としては以下の記事もおススメです。

 

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 ラブコメディがお好きな人は、こんなものもあります。

 

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