創世記(ジェニシス)から見える/『ターミネーター:新起動/ジェニシス』
前回の記事で、『ジェニシス見るなら予習せよ/ターミネーター1・2』でも紹介しましたとおり、「ターミネーター:新起動/ジェニシス」を劇場でみてきましたので、感想・紹介を行ってまいります。
ジェニシスをこれから見ようと思っている方、ジェニシスをより深く知りたいという方は、前回のエントリーを読んだあとに、再び戻ってきていただけるとありがたいです。
ジェニシス(創世記)とは
早速ですが、ターミネーター5とかではなく、『ターミネーター:新起動/ジェニシス』と題された本作品。この新起動と書いて、ジェニシスと読ませる中二病的なルビは一体なんなのでしょうか。
ジェニシス(Genesis)とは、ユダヤ教とキリスト教の聖典である「創世記」のことを指します。
「光りあれ」という台詞でお馴染み「天地創造」などが書かれている、キリスト教でいうところの旧約聖書ですが、映画のほうはスペルが違います。
Genisys
劇中で、次世代OSとしてジェニシスというソフトが登場します。
あらゆるものを一つのOSに統一するというもので、軍事から家電にいたるまで全てをジェニシスというOSに統一にすることで、世の中を便利にするソフトウェアだと、劇中では紹介されると共に、これこそが後に人類と敵対することとなる「スカイネット」のことだとわかります。
劇中では10億人のユーザーが予約をするという驚異的なソフトウェアになっています。
Microsoft もWindows10を10億ユーザー突破を目標にしているというコメントもありますので、図らずもマイクロソフト批判をしているようにも思えるところがいいですね。
Windows XPからWindows7に移行するときですら、とんでもなく大変だったのに、未来の人間は、そんなにあっさりOSを変えられるのか、と思いますが、まぁ、映画なので勘弁してください。
ちなみに、このあらゆるデバイスを一つのOSでという考えもまた、7月29日に発売されたWindows10の考え方に酷似しているともいえます。
そういったIT業界を意識していることを考えれば、GENISYSの「SYS」は、SYSTEMからきていることは間違いありません。
また、GENIは、あまり話に上ることがありませんが、次世代ネットワークを考えるプロジェクトがGENI(Global Environment for Network Innovations)と呼ばれていることから、コンピュータ・ネットワークに関係する単語と、ターミネーターシリーズの世界をまた一から作り直すという意味を聖書の創世記とからめて、ジェニシスという言葉が使われたと思われます。
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windowsに限ったことではないでしょうが、劇中では、あらゆるものごとが、タブレット端末で行われており、現代のスマートフォンに依存している社会を批判しているような描写がみられます。
その土壌のもとに、ジェニシスという新OSが、あと少しで本格的に始動してしまうのをとめる、というのが「ターミネーター:新起動/ジェニシス」の目的になります。
スマートフォンなどの機器に依存して、自分の頭で考えなくなった人類は、やがてスカイネットの脅威にさらされて、大変な目にあうぞ、という警告にもなっているのです。
オマージュ。
ジェニシスで特に注目されていること、それはT1、T2などのターミネーター的オマージュがこれでもかとちりばめられていることでしょう。
前半30分はまさにインスパイア、オマージュ?を思いっきり楽しむことができます。
そして、前半の見所の一つに、ターミネータージェニシスのホームページでも散々予告されてしまっていますが、新旧TX-800対決が見ものです。
T1において、悪役としてあらわれたシュワちゃんを、「待ちくたびれたぜ」と、あらわれる、ちょっと老けたシュワちゃん。
いきなり戦闘開始。
ただし、ターミネーターといえば、華麗な戦闘シーンではなく、力と力のぶつかり合い。泥臭いまでの殴り合いこそが、ターミネーターシリーズの醍醐味です。
銃で撃って、弾がなったら、殴り合い。
この戦いの仕方は、ジェニシスでも健在です。
歳をとっているはずの老いぼれTX-800は、ピチピチシュワちゃんと同じ戦いしかしません。
サラの援護があるといっても、もうちょっとスマートに闘えないのか、とつっこみをいれたくなる気持ちを抑えるのに苦労します。
とはいえ、アーノルド・シュワルツネッガーも67歳。
T4に出演できなかったのは、カリフォルニアの知事をやっていたからという事情もあったりして、一時は筋肉がめっきり落ちてしまったシュワちゃんですが、半年間びっちりトレーニングしたおかげで、以前ほどではないにしろ、若い者には負けない肉体を取り戻しています。
イ・ビョンホンがTX-1000として、カイル・リースを殺しにくるという場面も、T1への見事なオマージュが、往年のファンをうならせます。
開始30分くらいでしょうか。
スカイネットを止めるため、2017年の世界に行くまでの間は、T1・T2へのオマージュと、新たなる物語への期待で、あっという間に時間が過ぎ去ります。
T1・T2を予習した人は、この30分のために見たといっても過言ではありません。
再現シーンに至っては、コンマ単位でシーンを合わせたというこだわりようで、ターミネーターファンは、必見の映像となっています。
サラ・コナーが可愛い?
サラ・コナーといえば、リンダ・ハミルトンです。
野獣のような表情と、T2では鍛え上げた肉体と役作りは、見るものの心をつかんではなさなかったことでしょう。
サラ・コナーは、闘う女性の象徴であり、ジェームズ・キャメロン作品においては、強くてたくましい女性というのは、欠かせない存在でもあります。
ジェームズ・キャメロンの元奥さんとしてもリンダ・ハミルトンは有名です。
そのサラ・コナーですが、ジェニシスでは、なんと、2012年「最も美しい顔」1位に選ばれたエミリア・クラークが演じています。
野獣のようなリンダ・ハミルトンとは対照的な女優さんなので、どうなんだろうと思っていましたが、現代版のターミネーターとしては、悪くない選択だと思います。
個人的には、「キック・アス」でヒットガールを演じた、クロエ・グレース・モレッツと顔の雰囲気が似ていることもあって、銃を突きつけながら「死にたくなければ、乗りなさい」とカイル・リースに恫喝する姿は、キックアスを助けに来たヒットガールそのものに見えて、違和感なくサラ・コナーと認めることができました。
改めて、内容。
さて、ターミネータージェニシスは、物語の構造がより複雑になっています。
T1の世界が基本となっていますが、ジェニシスの世界のサラ・コナーは、TX-800であるシュワちゃんのことを「おじさん(pops)」と呼びます。
ジェニシスの世界では、サラ・コナーが9歳のときに、TX-800があらわれて、サラ・コナーを救ったためです。そして、なぜかTX-800演じるシュワちゃんに徹底的に鍛え上げられています。
そのため、T1のときの、銃すらまともにもてなかったサラと違い、本作品のサラは、バリバリ闘います。
この物語は、T1の世界。T2の世界。そして、T2以後の世界で再び機械との戦争が行われ、且つ、もう一度異なる未来があり、そのさらに未来からの影響がでた世界と推定されます。
って書くと、ややこしくなるのですが、本作品が、3部作となるという話ですので、ジェニシスの世界が、何回目の過去と未来のやり取りなのかは、あとからわかることでしょう。
T1で、カイル・リースが「可能性の未来だ」と言っている台詞があります。
タイムスリップものは、考えれば考えるほど矛盾や疑問点が浮かんでくるものですが、この作品では、因果によって可能性の未来が作り出されるようです。
さて、某PC98時代の超大作ゲームの考え方を借りるのであれば、以下のように考えることができると思います。ちょっと、ごちゃごちゃしているので、面倒な方は読み飛ばしていただいてかまいません。
過去に自由に戻れる男がいて、その人物がケーキを食べたとします。
でも、その男は、このケーキを食べなかったとしたらどうなるのだろうと考えたとします。
じゃあ、食べる前の過去に戻り、ケーキを食べなかったとしたら、ケーキを食べた未来はどうなってしまうのか。
ケーキを食べたからこそ、『ケーキを食べなかったらどうなるのか』と考えた。その結果、過去に戻った。では、ケーキを食べた世界は存在しないのか?
そのことから、因果によって可能性の未来というのはつくりだされるという考えをもちだすことになります。
ますます、わからなくなってきた?
ケーキを食べたから、ケーキを食べない世界にしようと思った。これが原因です。
その結果、食べなかった世界がつくりだされる。
この結果は、ケーキを食べた、という世界があったから生まれた世界です。
ターミネータージェニシスでも、過去のターミネーターが送られてきたから、今のサラがいるけれど、鍛えられていなかったウェイトレスのサラがいなくなったわけではないのです。
あらゆる事柄が因果のもとに積み重なっているのが重要となってきます。
って、掘り下げるとこんがらがりますので、これぐらいにします。
このあたりの、設定をいかにわかりやすく説明してくれるかが、今後のジェニシスシリーズのポイントになってくるでしょう。
乙女になったサラの闘い方
サラ・コナーは、今までの作品と違って、かなり乙女チックになっています。
これは、もうネタバレでもなんでもなくなっていますが、カイル・リースこそがサラ・コナーの夫であり、救世主ジョン・コナーの父親です。
過去に戻ってきたカイルと、サラが子供をつくらなければジョン・コナーは生まれません。
それは、いわば運命。
でも、新しいサラは、それに納得ができません。
自分の運命は自分で決める。もちろん、好きな人だって自分で決めるわ、といきまく中で、二人ははたしてくっつくのか、っていうのが一つラブストーリーっぽい雰囲気をだしてくれるので、そのあたりも、にやにやしながら楽しんでもいいかもしれません。
アイルビーバック。シュワちゃん
この作品でも、名台詞を言ってくれます。
また、今回のターミネーターは、歳をとることになっています。
皮膚は人間と同じ生体皮膚であることから、人間とまったく同じじゃないにしても、劣化するという設定になっているのです。
だから、シュワちゃんが、67歳でも違和感がないという設定になってます(ホントか)。
ユー アー ターミネイト
とはいえ、ターミネーター1・2を改めて見返した人は、もしかしたら物足りなさを感じるかもしれません。やはり、巨匠ジェームズ・キャメロン監督ではないので、歴史的傑作と見比べるとやや冗長的な部分はあるように感じます。
ただ、ターミネーターを知らない人が、改めてターミネーターに踏み入れるきっかけとしては、大変良いできだと思います。
個人的には、これをみたあとに、ターミネーター3を見ることで、映画会社の都合でつぶれてしまった可能性の未来をみるというのも面白いと思います。
ジェニシスの敵よりも、T3の女ターミネーターのほうがはるかに敵として手ごわいし、金属骨格に流体金属をまとうことで、複雑な武器になれない流体金属TX-1000の欠点を克服している点がまた面白いと思ったのですが、それもまた可能性の未来です。
最後に、劇中の言葉を借りて紹介を終えたいと思います。
ターミネーターシリーズは、たしかに古い作品にはなってしまいましたが、ポンコツではない。まだな。
以上、「古いが、ポンコツではない『ターミネーター:新起動/ジェニシス』」でした!
記事冒頭でも紹介しましたが前回のエントリーはこちらです。
また、ターミネーター:新起動/ジェニシスをみたあと、その余韻を楽しみたい方は、是非、ターミネーター3・4の解説も行っておりますので、是非ご覧ください。