シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

警察官とヤクザのあいだに友情は成立しうるのか  『県警対組織暴力』

本日とりあげるのは東映実録路線の名作「県警対組織暴力」(1975年、100分、日本)であります!

 

キャスト(菅原文太松方弘樹ら)、監督(深作欣二)、脚本(笠原和夫)の名前をみてわかるかもしれませんが、1973年から74年にかけて公開され大ヒットを記録した「仁義なき戦い」シリーズ製作陣による作品です!

 

倉島市、ヤクザと警察の癒着構造


舞台は昭和38年、西日本の地方都市の倉島市。倉島署捜査二課部長刑事である久能徳松(菅原文太)は、大原組若衆頭であり広谷組組長の広谷賢次(松方弘樹)と組み、川手勝美(成田三樹夫)率いる川手組と争いを繰り広げていた。


激化する抗争を鎮圧するため、倉島署に「倉島地区暴力犯罪合同取締本部」が設置され、県警本部の海田昭一警部補(梅宮辰夫)が大原組担当班長となり、捜査を指揮を取ることとなる。

 

ヤクザと警察の癒着を嫌う海田は、久能を捜査班から外し、暴力団取締りの勢いは増していく。久能と広谷のこれまでの持ちつ持たれつの関係にもヒビが入り…。

 

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久能と広谷


警察官である久能とヤクザの広谷が、どうして共闘するようになったのかは物語中盤の回想シーンであかされる。


6年前、大原組の内紛で三宅組長が独立宣言。その三宅を射殺したのが広谷だった。目的を果たした広谷は、久能のアパートに出向き自首するが、茶漬けを食べたあと茶碗を一心に洗う姿を見て、久能は見逃すことを決める。三宅組長射殺事件は犯人不明のまま捜査は終了し、久能と広谷の奇妙な連帯が始まった。


15年、20年の刑期をくらうことを覚悟し、自首したその潔さに心をうたれたのかもしれない。大原組本部に弓をひいた相手を始末するために利用された、その境遇に同情したのかもしれない。


そもそも久能は「ピストルを持ちたかった」から警官になった。一歩違えばヤクザになっていてもおかしくない状況だったのは、新任刑事の河本(山城新伍)と柄原(室田日出男)が元々同級生で、それぞれ刑事とヤクザとなって再会するエピソードを見ても明らかである。


この映画は、男と男の友情をめぐる悲劇の物語なのです。

 

深作欣二の画作り


東映実録路線のカメラの特徴として、エピソード・シーンを短く重ね、抗争シーンでは画面がグラグラと安定せず臨場感を出すということが挙げられる。


有名なシーンとして松井卓(川谷拓三)が、久能と河本靖男(山城新伍)に取り調べで(ホントに)ボコボコにされるという部分。


川手の「戦争や、いてこましたれ」というセリフから始まる抗争の中、ヤクザの首がスパーンと刎ねられ、階段をゴロゴロと転がっていくシーンや、「こんにちは赤ちゃん」が流れる中で大原組内部の裏切り者が刺されて悶えるシーンがあり、いずれも扇情的な絵作りがなされていて観ていて酔いそうですが、テンションあがります。

 

東映ヤクザ実録路線の傑作


ヤクザ映画(とくに東映実録路線)は、頭をカラッポにして楽しむことのできるサービス精神に溢れた娯楽作品です。

 

その中でも本作は、笠原による練られながらもシンプルなシナリオ、深作によるシャープ且つ扇情的な絵作り、菅原はじめ役者の(過剰なまでの)見事な演技などが融合した熱い傑作であります!

 

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