シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

ファミリー・ツリー

 http://www.flickr.com/photos/24576874@N00/3901537243

photo by Julien Haler

 初回に取り上げるのは、アレクサンダー・ペイン監督作品「ファミリー・ツリー」です。

 

舞台はハワイ。

 

あの歌で有名*1な、カメハメハ大王の子孫である主人公が、先祖伝来の土地を売るべきかどうするかを決めるという中、妻がボート事故で昏睡状態になってしまいます。

しかし、10歳と17歳の娘をもつ主人公は、弁護士として忙しく仕事一筋。

 

家族のことは放っておいてしまったせいで娘たちとは何を話していいかもわからない体たらくっぷりで、17歳の娘に、10歳の娘と何を話したらいいんだ、って聞いてしまうあたり、駄目親父っぷりがわかります。

 

しかも、娘二人は問題児で、家族はバラバラ。

そんな中、さらに拍車をかけるように、娘から奥さんが浮気していたことを告げられて、娘たちと一緒に昏睡状態の奥さんの浮気相手を探していくという物語です。

奥さんの浮気をしていたことを知らなかったのは、主人公だけっていうところが、泣けます。

 

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アレクサンダー・ペイン監督は、前作「アバウト・シュミット」でも仕事一筋だった主人公が、家族から見放され、孤独になっていく様をブラックコメディタッチで描いた良作も描いています*2

仕事男が、そのツケを払わされるっていう話が多いですね

 

ただし、「ファミリー・ツリー」では、ツケを払うというよりは、そうなってしまう前に、事件が起きて、その事件が家族を結び付けていくという物語になっています。ただ、逆に言えば、事件が起こらなければ、この主人公は、アバウトシュミットの主人公とそう代わらない、いや、もっと悪い人生が待つことになっていたでしょう。

 

 

 

現実と向き合うということ

この映画をみて痛感させられること、それは、主人公であるマット・キング(カメハメハ大王の子孫だから、苗字がキングらしいです。王貞治みたいなものでしょうか)が、今まで伸ばし伸ばしにしたり、考えないようにしていた現実と向き合うというところ。

アバウトシュミットの主人公も、自分の都合のいいところばかりみていたら、奥さんが浮気していたことがあって発狂するというシーンがありました。

 

ちなみに、ハワイの土地は膨大すぎるため、信託会社に預けられています。

ただし、信託している期間が残り7年に迫っていることもあって、土地を売却して今いる親戚で利益を分けようとしているのです。

 

ただ、先祖から受け継いだ土地を、今の自分達が売ってしまっていいのか。

主人公は、弁護士として生きているので、土地を売ったお金がないと生きていけないとか切迫した事情はありません。だからこそ、土地に対してそれほどの思い入れはなく、土地を売ってしまおうと考えています。

 

ただ、ここに自分の確たる考えはない。

別に、親の土地をもらったからといって、それを受け継ぐだけが全てではないと思いますし、お金にさっさとかえるというのがいかにも薄情に思えますが、まぁ、ケースバイケースだと思います。

 

妻に対しては、主人公はあまりいい夫でなかったと自覚しながら、土地を売ったお金で妻に贅沢させてあげて、もっと一緒にいる時間をつくろう、なんぞと考えています。

しかし、それなら、土地とか関係なく、やさしくしてやれよ、と思うんですが、まぁ、そういうのは誰しもなってしまうのが現実です。

 

そうやって、のばしのばしにしている間に、奥さんは昏睡状態になり、しかも、やっぱり、奥さんの心は離れていて、浮気相手がいる始末。

追い討ちをかけるように、医者が奥さんが昏睡状態から助かる見込みがないため、生命維持装置をはずすかを打診される。

 

決断に次ぐ決断

娘二人も問題児ですが、その彼氏もまた、チャラい奴です。

ガールフレンドの父親に会ったというのに、抱きつきながら、「へい兄弟」ってなもんで、その若者っぷりに苦笑いです。

 

どうしようもないメンバーの中で、妻の浮気相手を探しながら、家族が家族として絆が強まり、頼れるパートナーのようになっているさまが実にいいです。

それと同時に、事件を通した中で、主人公は先祖伝来の土地に対しても、どうしていくべきか、困難に立ち向かうことはどういうことを自分達にもたらしてくれるのかに気づき、自分自身の考えを持っていくようになります。

 

地味だけど、くすくすできるコメディが好きな人におススメ。

アレクサンダー・ペイン監督作品は、実は若い俳優とか、イケメンの俳優はあまりでません。

ですが、この作品では、珍しく主人公の娘が若く、大活躍をするので、年寄りばかりの映画はみたくないなー、という人でもまったく気にせず物語に集中することができると思います。

 

残念ながら、イケメンはいませんが、年をとったとはいえ、ジョージ・クルーニーが主人公を演じますので、勘弁願います。

 

この物語は、劇的な出来事はおこりません。

でも、大事なことは少しずつつみあがっていくものだと感じさせてくれる、そんな作品です。もうおっさんだというのに、ジョージ・クルーニーは走る姿もいい感じです。

 

以上、アレクサンダー・ペイン監督。

ファミリー・ツリー」でした!

 

一回目のブログなので、まだまだ書き方がこなれていませんが、そのうちよくなっていくと思いますので、よろしくお願いします。

書き手【信条皆無】

*1:童謡のタイトルは「南の島のハメハメハ大王」だそうです。カメハメハ大王だと思っていたのですが違っていたようです。

*2:今後、アバウトシュミットについても感想等をとりあげていく予定です。

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