夫婦円満の秘訣。感想。映画「家に帰ると必ず妻が死んだふりをしています。」
「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」は、悩みを抱えた人間の駆け込み寺である、yahoo知恵袋に投稿された内容をもとに広がった作品となっています。
本記事では、安田顕と、榮倉奈々という二人の主演によって作られた映画版について、語ってみたいと思います。
ネタバレはしますが、ネタバレを気にするような映画でもないように思いますので、気になる人は気を付けていただきつつ、感想&解説がてら見てみてもらればと思います。
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3年目のジンクス
恋や愛もまた、熱力学第二法則に従って、いつかは冷めてしまうものです。
恋愛の賞味期限といえばいいのでしょうか。
その考え方は様々ですが、「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」において、主人公である安田顕演じる加賀美じゅんは、夫婦生活3年目を迎える男であり、3年目で前の奥さんと別れたというトラウマから、二度目の結婚でも3年目に恐怖をしてしまっている設定となっています。
恋愛に限らない話ではありますが、3の法則というのはありまして、付き合って3日目、3か月目、3年目といった感じに壁があるといったことは、なんとなく聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。
脳科学的にも云々といったものもありますが、主人公のじゅんは、いずれにしても、3年目を乗り越えられるのか。妻との契約更新ができるのか、と不安になっています。
そんな主人公が、家の玄関をあけると、妻が口から血らしきものを流して倒れている、というところから物語は始まります。
物語そのものは、おおざっぱにみるのであれば、夫婦生活へのトラウマをもっている主人公が、天真爛漫な二人目の奥さんの奇行に悩みながらも、自分自身の不安と向かう、といったところがおおむねの内容でしょうか。
やすけんのショートコント
「ちえ! ちえ! ああ、117117」
と間違って、時報をならしてしまうやすけん。
安田顕といえば、大泉洋に引っ張られる形で東京へと進出してきた北海道がほこる俳優です。
一時期は、女子アナのかんだティッシュを口にいれたり、マスコットキャラの着ぐるみを、着たままつぶす、という奇行を続けていた人物です。
そんな安田顕が、まさか奇行をみせられる側となり、かつ、それに対してリアクションを続けている、というのは、感慨深いものがあります。
「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」は、家に帰ると、様々なシチュエーションで妻が死んだふりをして、その対応を楽しむ、というのがポイントとなっています。
映画では、ダイジェストで語られるところですが、宇宙人の格好や猫の格好、拷問を受けて死ぬ兵隊など、奥さんは何年生まれという設定か、と疑いたくなるような状況ですが、物語の前半は、そんなよくわかない二人の関係を楽しむおもろさがあります。
様々な夫婦
ひたすら、妻が死んだふりをする作品とはなっているため、物語的な起伏は乏しい作品となっています。
その中でも、本作品のテーマとしてあげられているのが、夫婦というものです。
作中でも、主人公の職場の後輩が登場し、夫婦とは、といった話をします。
「紙ぺら一枚で、お互いを制限してさ」
あまりに、一般論的なことばかり言っていることが多いのですが、夫婦生活という点で、よくある話が劇中で何度も見かけることになります。
不倫をしたいんじゃないかと思う後輩もそうですが、息子と嫁からはないがしろにされながらも、「愛だな」といいながら働き続ける課長。
夫婦二人でクリーニング店を営んでいたのに、突然亡くなってしまった妻の話をする老人など。
何組かの夫婦が登場して、夫婦のありかたを主人公にみせてくるのです。
すれ違い
「言いたいことがあったら、言ってくれよ」
「月が、きれいですね」
榮倉奈々演じる加賀美ちえは、はぐらかすように言います。
何度も何度も同じセリフが言われるので、そのうち気づく人もいるかもしれませんが、このセリフは、作中でも説明されている通り、夏目漱石が、I love youを訳したときのものだとされています。
榮倉奈々演じるちえは、文学少女だったというわけでは全然なく、高校の教科書の文学一覧みたいなものから知ったに過ぎないふうに描かれてしまっていますが、いずれにしても、この言葉が重要な意味を持ちます。
というよりは、そのまんまの意味を持ちます。
そして、「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」は、物語の前半が、一番恐ろしい映画になっています。
妻の真意がわからない。
あまり内容を知らないで映画をみると、本作品がミステリかサスペンス映画なのかと疑ってしまいたくなる瞬間があります。
一度離婚して再婚した男には、やけに若い奥さんがいるけれど、その妻が、なぜか結婚3年目にして、死んだふりをする。
これは、かなり怖いことです。
1年目にそんな行動をするならわかりますが、3年目になろうかという夫婦に訪れるわけですから、それは、妻の精神がどうにかなってしまったと考えるほうが自然でしょう。
「言いたいことがあるなら、言ってくれよ。子供みたいなことはやめてくれ」
という、じゅんの気持ちもわかろうというものです。
妻がなぜ、そんなことをはじめたかの理由は、物語の後半に、一応わかりはするのですが、ここでその内容を書くのは野暮ですのでやめておきます。
ですが、本作品が、そんな二人を通じて、夫婦というものの一般論がわかるところが、面白いところです。
「ワニが好きなんですか」
「ワニはね、どう猛に思われているけれど、そうじゃないの」
と、いきなり、目の前にセリフがそのままるようにしゃべる後輩の奥さん。
「ワニが好きだったなんて、知らなかったよ」
と、まぁ、夫婦生活をしていても、相手のことがわからないんだ、ということを伝えてくるのですが、なんか、嘘くさかったりしはします。
不妊治療がきっかけで夫婦仲が悪くなってしまったという打ち明け話もあるのですが、どうにも、一般論過ぎるように思います。
いずれにせよ、夫婦に限ったことはではないですが、相手の知らないことを知ろうとしたり、相手のことを楽しませたいとか、つらいことを緩和させたいと思う、非常にやさしい物語であることには違いありません。
夫婦映画について
さて、夫婦を題材にした映画というのは様々ありますが、夫婦であればみておいたほうがいい作品を紹介したいと思います。
デヴィット・フィンチャー監督「ゴーン・ガール」は、まさに夫婦とはどういうものか、というものを真正面から向き合った物語となっています。
近所でも、おしどり夫婦として有名な二人がおり、その妻がある日失踪してしまいます。
ベン・アフレック演じる夫が、失踪した妻を殺した容疑者としてあがってしまったことで、一気にニュースで取り上げられて、有名人になってしまいます。
ネタバレになるので詳しいことは書きませんが、旦那が疑われるように仕組んだのは、当の妻だったことがわかるのです。
のちに、恐ろしい性格であったことがわかる奥さんですが、他人からみれば、彼らはやっぱり、理想の夫婦のように見られます。
しかし、二人の間では、どうなってしまうかわからない状態。
でも、最後に彼女は言うのです。
「夫婦、ってこういうものよ」
まぁ、これはネタバレのセリフなので、忘れていただければと思います。
また、スタンリー・キューブリック監督「アイズ・ワイド・シャット」なんかもまた、夫婦をテーマにした作品となっています。
トム・クルーズと、ニコール・キッドマンが主演の作品となっており、倦怠期を迎えた夫婦が、お互いに不倫をしているんじゃないかという疑心暗鬼にかられる、という物語となっています。
物語の最後に、夫婦円満の秘訣が、たった一言で語られるところは、さすが巨匠の作品、とうなずくこと間違いなしの作品となっています。
「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」は、目を引くタイトルと、安田顕と榮倉奈々のダブル主演によって、話題になった作品です。
撮影後のキャストの変更もあったせいか、時々、唐突な場面転換があったりしますし、家の中が、3年目の夫婦のわりには、やたらにきれいすぎて生活感がなさそうに見えたりしますが、それはご愛嬌といったところでしょう。
もし、夫婦生活で悩んでいる人がいましたら、一緒に、わいわいがやがやしながらみると、楽しめるかもしれません。
以上、夫婦円満の秘訣。感想。映画「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」でした!