シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

劇場版を見る前の復習に。アニメ版総集編「メイドインアビス」感想

劇場版総集編メイドインアビス 【前編】旅立ちの夜明け

劇場版総集編メイドインアビス 【後編】放浪する黄昏

 

つくしあきひと氏による漫画「メイドインアビス」。

その劇場版アニメである「メイドインアビス 深き魂の黎明」が公開されているわけですが、本作品をみるにあたって、原作を読んで復習したいところ。

できれば雰囲気をつかみなおすためにも、アニメで見返したいのが人情ではないでしょうか。

今回は、放送されたアニメの総集編である「メイドインアビス 前編 旅立ちの夜明け」「メイドインアビス 放浪する黄昏」の二作品について、原作を含めた中での感想を述べつつ、メイドインアビスの紹介がてらの復習として本記事をご覧いただければと思います。

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メイドインアビスとは

広大なファンタジー世界を探検するという物語は数多くあり、ダンジョンに潜っていく、という話も数多くあります。

ドルアーガの塔」なんかは、タイトルの通りひたすら巨大な塔を上っていくという作品となっておりましたが、多くの場合、特定の場所にもどってきたりして拠点が存在するものです。

 

TVアニメ「ドルアーガの塔」Blu-ray BOXの宮
 

 

メイドインアビスでは、その拠点というものが存在しません。

本作品の前編においては、穴のまわりにある孤児院で生活する子供たちを描き、主人公であるリコが、母親からの手紙と思われる紙片を頼りに、アビスという巨大な穴へ降りていき、探窟家としての一歩を踏み出すまでを描いています。


上昇負荷という設定が面白く、降りるのはいいけれど、上へと戻るときに、原因不明のアビスの呪いによって、様々な不調がでてくるという設定となっています。

細かい上昇負荷については、本編をみていただければと思いますが、ここで押さえておくべきポイントは、行ったら戻ってこれない、という点です。


いざとなれば帰ればいい、とか、そういう甘い考えは、前編のところで考えるものではないことを、登場人物たちの言動と反応でこれでもかとわかるようになっています。

 

行けば帰ればい死地へ旅。それでも、行くのはなぜなのでしょうか。

可愛いが甘くはない

本作品をみたときに、絵で拒絶反応を起こしてしまう人は一定数いるのではないでしょうか。

まるっこい幼児をデフォルメしたような造形のキャラクター、いわゆる、ぷに絵のような描き方は、一定の人にはそれだけで、見る気力をなくしてしまうことでしょう。

ですが、本作品は、たんにかわいいキャラクターが、見たことのない世界をみるという物語は決してありません。

むしろ、リアルな絵柄にしてしまうと、あまりのグロテスクさに血の気が引いてしまうところです。


上昇負荷と呼ばれるアビスの呪いは、軽いめまいや、嘔吐など、地下深くにいくにしたがってひどくなっていきます。

主人公であるリコは元気なキャラクターですが、そんなリコもまた上昇負荷によって、簡単にゲロを吐いてしまいます。

アニメ総集編の前編においては、ちゃんと厳しい現実というのがわかるように作られています。。

自分たちの無力さや、まわりの大人たちのやさしさ、仲間たちの想いも含めてよく描かれています。

 

自分たちだけでは、奈落の底に行けると思っているリコたちですが、オーセンにあっという間に叩きのめされてみたりしながら身の程をしりつつ、ちゃんと修行するシーンをいれているところも好感がもてるところです。

本作品の根底にあるのは、どこまでも人間賛歌であると感じます。

 

探窟家

話はそれますが、世界最高峰の山に登ってみたり、危険と言われる場所にいってみたりする人たちというのは、世の中に途方もない数存在します。

名誉のためにやる人もいるかもしれませんが、その大半の人は、おそらく、そこへ行ってみたいという衝動ではないでしょうか。

メイドインアビス」はそういった探検するものの気持ちを鮮明にしている作品であるといえます。

 

その穴を降りれば、二度と戻ってくることはできない。
しかし、それでも、奈落の底を見るために、探窟家は、下へ下へと降りていく。


「赤笛が二層に降りると、自殺扱いとなる」

または、

「6層に降りることを、ラストダイブって呼ばれている。二度と戻ってこられないから」

リコは、母親に会いに行く、という目標があるものの、孤児院の仲間たちや、オースの町の人たちと二度と会えないとわかっています。


そんな状況でありながらも、リコと、ロボット?であるレグの二人は、お互いがお互いを補いながら、奈落の底へ降りていきます。

後編のグロテスクさ

後編になってくると、一気に状況が変わってきます。

前半はなんだかんだと、見守ってくれる大人がいましたが、タマウガチなるアビスの生物に出会った彼らは、一瞬で壊滅的なダメージを受けてしまいます。

リコは左手を毒のあるトゲで貫かれてしまいます。


それはあまりに一瞬の出来事です。

強いて言うのであれば、戦争映画の金字塔である「プライベート・ライアン」において、一瞬にして死んでしまう兵士たちのそれに似ています。

可愛いキャラクターたちだからといって、可愛いままではいられない程度に、本作品は、厳しい現実も描きます。


ただ、本作品がどこまでも人間賛歌だと思うところは、リコの腕が復活したときのことです。

左手を貫かれ、毒による死亡を防ぐために、腕を折ろうとします。

関節からちぎってしまったほうが楽なのですが、リコは、腕の途中から切り取ることをレグに進言するのです。


のちに、成れ果てになってしまっているナナチが言います。

 

「肘から先が残っていれば、探窟でできることの幅が大きく違うんだよ。まだ進む気だったのさ。こいつはあの状況になってもまだ、冒険をあきらめてはいなかったんだよ」

 

そして、後遺症が残りながらもリコの手は治ります。

ちょっとした作品であれば、物語の性質上やむえないとはいえ、結構、後遺症なく治ってしまうことが多いものです。

ですが、リコは腕を高くもちあげて、左手の親指が動くことを確認します。

「親指だけでも、動く」


たしかに、五体満足というのは素晴らしいことですが、いつ命が失われるかもしれない探窟の中、また、戻ることのできない旅の中で、身体に障害が発生したとしたら、あきらめてしまうものではないでしょうか。

しかし、リコは、その中でできることを見つけて進んでいく。


あらゆる意味で、前向きな作品であるということも、「メイドインアビス」の特徴といえます。

ナナチという成れ果て

メイドインアビス 劇場版総集編 放浪する黄昏」の大半を占めるのは、人気キャラクターであるナナチの物語です。

アビスという場所の特殊な設定を最大限に活用とした内容となっており、世界観を視聴者に伝えるとともに、この世界の現実は、簡単なものではないことも教えてくれます。

 

上昇負荷の中には、人間性の喪失というものがあり、その呪いによって人間ではないものになってしまった子供たちの話が描かれます。

好奇心溢れるキャラクターがどんどん現実を知りながらも、自分たちの思ったように進んでいくという爽快さも含めて本作品は、他作品にはない面白さを持っています。


原作もまだ完結していない作品ですので、言えることは多くありませんが、未知の世界に挑んでいくときの、わくわくした気持ちを教えてくれる作品となっています。

メイドインアビス」は、その設定の特殊さも相まって、内容がわかればわかるほどより面白く感じることのできる作品となっていますので、映画「メイドインアビス 深き魂の黎明」を見る前には、ぜひ、総集編を見返したうえで、続きをご覧になっていただければと思います。

 

以上、劇場版を見る前の復習に。アニメ版総集編「メイドインアビス」感想でした!

 

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