改悪? 「ジュマンジ ウェルカムトゥジャングル」感想
「ジュマンジ」といえば、ロビン・ウィリアムズ主演による傑作映画です。
謎のボードゲーム「ジュマンジ」にかかわった人間の不幸を描く作品となっており、成長や親の愛情を描く作品として、かつてはロードショーにも頻繁にかかっていた作品となっています。
そんな「ジュマンジ」の続編として公開されたのが、「ジュマンジ ウェルカムトゥジャングル」です。
ちなみに、続編だからといって、まったく前作をみる必要はありません。
前作だけ見ていればいいとは思いますが、たまには、何も考えずにただただ、役者の演技を楽しむ映画というのもいいものですので、ツッコミどころを最小限にしつつ、感想を述べてみたいと思います。
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ジュマンジとは
さて、そんなことを書きながらも、やはり、本作品はレジェンド級の映画である「ジュマンジ」の続編となっていますので、簡単に前作の説明をしてみたいと思います。
詳しい内容については、別記事を参考にしてもらえればと思いますが、ジュマンジは、謎のボードゲームとなっており、それ自体が非常に悪意と遊び心をもったゲームとなっています。
一度はじめると終わるまではその影響下からぬけだすことができない呪いのようなボードゲーム。
アラン・パリッシュという少年がジュマンジの中に入り込んでしまったことで、彼の家族はめちゃくちゃになってしまいます。
その後、二人の子供たちがゲームの続きをやることで、世代を超えた仲間との交流や、子供のままの大人が、本当の意味で成長していくことを描かれた良作品となっています。
初代ジュマンジのよいところは、その理不尽さです。
サイコロを振ると、その都度動物がでてきたり、巨大な虫がでてきたり、地面が沼になったりと、理不尽なできごとが発生してしまいます。
その理不尽の中で、年齢も性別も関係なく立ち向かっていく姿こそが、ジュマンジの中心にある面白さなのですが、続編である「ジュマンジ ウェルカムトゥジャングル」は、ちょっと雰囲気が違います。
時代に合わせて変化した
続きもの、ということで、おそらく前回捨てられてしまったと思われる砂浜に埋もれていたジュマンジが発見されてしまいます。
ですが、時代はテレビゲーム全盛期。
「ボードゲームなんて、誰がやるかよ」
という言葉に、ジュマンジがショックを受けたのか、なんと、ドンドコドンという音とともに、ゲームカセットを生み出してしまっています。
まるですねたかのようにゲームソフトになり、それをプレイした若者が、ゲームの中に取り込まれてしまうおちゃめさで、物語がはじまるのです。
これは、一定の年代にしかわからないと思いますが、あかほりさとる作品の代表作「NG騎士ラムネ&40」では、主人公のラムネが、ファミコンソフトを10円で売ってもらい、一晩でクリアした結果、異世界であるハラハラワールドに勇者として連れていかれてしまいます。
そんな古い名作であるラムネを思い出してしまうような導入部が印象的です。
不思議な魅力によって、ついつい手にとってしまう恐ろしさがうジュマンジの魅力かと思っていたのですが、そもそも、理不尽の象徴であるジュマンジというボードゲームが、プレイしてもらうためとはいえ、テレビゲームに姿を変えてしまうという情けなさは、初代を知っているとなんともいえない気分になります。
異世界へようこそ
今話に出したラムネ&40に限らず、異世界ものというのは流行りに流行っております。
最近であれば「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。」といった作品もありますが、ネットゲームの中に入り込んで戦ってみたり、「オーバーロード」のように、ネットゲームをしていたはずなのに現実の世界とすりかわってしまったりと、手法は様々です。
ジュマンジは、登場人物たちの精神だけが入るアバターを通して、物語が進んでいきます。
自分の肉体ではなく、それぞれの用意された体に入り込んで、ジュマンジの平和を取り戻す、という、よくわからない壮大なクエストが用意されているあたり、たしかに、現代的にアップデートされてしまっているな、という感じを受けるところです。
主人公であるスペンサーは、ひょろひょろのギーク(おたく)ボーイですが、ジュマンジの世界では、ドゥエイン・ジョンソン演じるムキムキの男ブレイブストーン博士になってしまいます。
そのこと自体はいいのですが、最近流行りのネットゲームを中途半端にとりこんだような、ステータス表示は、たったの一回したでてこなかったので、意味があったのか謎なところです。
弱点がケーキというフランクリンという男は、パウンドケーキを食べただけで爆発してしまいます。
能力や弱点が、物語やゲーム性とほとんど関係なかったりするあたりも、困惑させられるところですが、物語の大枠もまぁ、だいたいそんな内容になっています。
落ちこぼれたちの再生もの
ちなみに、落ちこぼれの生徒たちがお互いを理解していく物語として、有名かつ傑作な映画としては「ブレックファストクラブ」が有名です。
落ちこぼれの生徒が力を合わせて乗り越えたりする物語は、定番といえば定番ですが、ブレックファストクラブは、スクールカーストがはっきりしているアメリカ社会で、出会うはずのない落ちこぼれたちが、お互いの立場を理解して、そして、またそれぞれの立場に戻っていくという作品になっています。
物語の出発点は「ブレックファストクラブ」となっている本作品は、ジュマンジというゲームを通して、お互いのことを理解していくようになるのです。
しかし、わりと、あっさりと自分たちの気持ちを吐露して、比較的初期の段階で彼らの関係はそれなりに修復されます。
物語のラストでは、階級が違う人間と話をしていることに驚いている友達を後目に、イケイケの女子であるベサニーが、森にいきたいと言って、周りの目も気にせずに主人公たちと合流するあたりは、ひやひやさせられます。
希薄な死
「ジュマンジ ウェルカムトゥジャングル」は、なぜかライフがわかるようになっています。
まるで、任天堂がほこるマリオのように、死んでも復活してしまう世界となっているのです。
3回死ぬと、本当に死んでしまうだろうことはわかるのですが、それが本当なのかもよくわからなかったり、突然、仲間割れで崖に突き落とされてあっさり死んだり、蚊に刺されて急に死にかけたりと、死に対する意識が希薄になっています。
ただ、主人公のスペンサーは、ゲームの好きな少年ということで、そういったゲーム世代への非難と、実際にライフが1になったときに、恐れる場面を描けたという点は、ゲーム世代への警鐘とうけとることもできるのではないでしょうか。
単純明快
さて、悪意や理不尽の塊であるジュマンジとか、スクールカーストと落ちこぼれによる交流を描いた「ブレックファストクラブ」とか、そんなことを言っていますが、本作品は、興行収益が非常によかった作品です。
本作品の最大の特徴は、その単純明快さと、役者の演技のすばらしさではないでしょうか。
謎のゲームによって、落ちこぼれたちが、それぞれちぐはぐなキャラクターに入り込んで戦う。
ジュマンジという世界は、呪いによって混乱しているから、盗まれた宝石をもとの位置に戻せ。そのためには、それぞれの能力をあわせて戦う。
最後にゲームは終わり、ちぐはぐだった落ちこぼれたたちは、一つになる、という、なんともいい感じの話としてまとまっています。
とにかく、やることが決まっていて、死にそうなこともなく楽しめるファミリー映画です。
また、ドウェイン・ジョンソンのムキムキさとアクション。カレン・ギランの堂々たる演技とアクション。
ジャック・ブラックの、中身は女性で外見はおっさんという演技のうまさ。
本作品は、圧倒的な役者の演技と、単純明快でありながら、その根底にある先行作品へのオマージュによって作られた作品となっています。
もし、本作品が気に入った方は、ぜひ、初代「ジュマンジ」もみていただきたいと思いますし、ブレックファストクラブも合わせてみていただけると、本作品への想いが強くなるのではないでしょうか。
以上、改悪? 「ジュマンジ ウェルカムトゥジャングル」感想でした!