シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

ライフスタイル提案型映画「間宮兄弟」感想

間宮兄弟

間宮兄弟」といえば、江國香織原作にして、森田芳光監督による代表作の一つとなっています。
 
内容といえば、30歳を過ぎていながら兄弟で二人暮らしをしている間宮兄弟にスポットをあてており、彼らがどういう風にして日常を過ごしているのか、ということをメインにした作品になっています。
なんかほのぼの系の物語だろうと思う人もいると思いますが、本作品は、2006年に公開されたときには、その彼らの生活を不思議がったり、奇妙に思った人も多かったと思われます。
その彼らの生き方を含めて、どのような作品かを感想を述べていきたいと思います。
 

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彼らをどうみるか。

佐々木蔵之介と、ドランクドラゴン塚地武雅という異色な二人が主演しています。

二人の主人公は、それぞれに仕事をもっていますが、彼らは兄弟で一緒に住み、野球の中継をみてはスコアボードをつけてみたり、眠くなるまで映画を見続けたりしています。
 
誤解を恐れずに書くのであれば、この彼らのやり取りをみて、ちょっと気持ち悪い、と思う人もいるかもしれません。
 
今の時代であれば、そういうのも全然ありじゃないか、と思う人も多いと思います。
30を過ぎた大の大人が兄弟で住んで、ボードゲームをしてみたり、じゃんけんをしながら、「チ・ヨ・コ・レイト」とかいって歩いて行ったりと、彼らがやっていることは、童心のときのそれそのものです。
 
冒頭だけみると、ちょっと、おかしな人たちなのかと思いますが、彼らは、それぞれの職場では、信頼された非常に立派な大人です。

佐々木蔵之介演じる兄の明信は、ビール会社に勤めており、部下をひきつれて歩き、対外的にもきちんとした振る舞いをしていますし、弟の徹信もまた、小学校の用務員として地味だけれど大事な仕事をもくもくとこなしています。
本来であれば、彼女なり奥さんなりがいてもまったく不思議ではない彼らは、なぜか兄弟で暮らし、はたから見ると異常なぐらい仲がよいのです。

参考映画

そんな二人の仲の良さをみていると、映画「テッド」を思い出すところです。
友達のいなかった少年と、命が宿ったくまのぬいぐるみが、そのまま数十年のときを経て、おっさんになってしまった、という話です。
「テッド」の素晴らしいところは、くまのぬいぐるみとの友情をとるか、恋愛をとるか、という悩みが発生するところが面白いのですが、これは、誰もが通る道でもあるところが興味深いところです。
 
子供のころから好きなアニメやゲームは、大人になると知らず知らずのうちにみんな卒業していってしまいますが、中には変わらずに見続ける人もいますし、人々の趣味趣向が多様化してきた現代においては、拒絶感を示す人のほうが少なくなってきているのではないでしょうか。
 
いい年齢になったら恋人をつくって、親友と離れ離れにならなければならない。
 
ある意味しょうがないことでもあり、果たして本当にそうなのだろうか、と思ってしまうところを、クマのぬいぐるみとの友情で見せるところは、脚本のすさまじさといえるでしょう。
さて、ひるがえって、2012年に作られた「テッド」よりも6年ほど前の「間宮兄弟」もまた、同様の構造を持っているように思われます。

二人以外に、必要なものは

明信と徹信は、これ以上ないくらいに信頼しあった兄弟です。
趣味の違いはあるものの、お互いが趣味人なのです。
 
本も読んでいて、模型をつくってみたりといろいろなことを二人はやっています。
でも、こころのどこかではこのままじゃダメなんだよなぁ、ということも思っているのです。
 
塚地武雅演じる弟が、自分の勤める小学校の先生であり、頼子先生(常盤貴子)を、兄に紹介するところから、物語は動き出します。
まるで、どらえもんのようにいろいろとやってくれる弟と、なかなか積極的に女性にあたっくできない兄。
アタックできない理由は、彼が引っ込み思案というだけではなくて、今の生活が崩れることへの不安や恐怖があるという、複雑な心境も映画の中でわかります。

沢尻エリカ演じるビデオ屋の店員本間直美と、常盤貴子演じる先生を誘って、家でカレーパーティを行います。

彼らは、根がシャイなので、差しさわりない理由をつけてしか女性を呼べないのです。
北川景子演じる直美の妹の本間夕美が、
 
「本当はクリスマスパーティって言いたかったんだよ。それが、おでんパーティってところが奥ゆかしいじゃない」
 
と言っていて、彼らの良さをよくわかっています。

いい男にはなびかない

間宮兄弟」にでてくる女性陣は、残念ながら、ダメな男に振り回されています。
 
沢尻エリカ演じる直美は、草野球か何かわかりませんが、あまり将来性がなさそうな男のことが好きで、いいように使われています。
「洗濯しておいてよ」
といって、都合のいい女として扱っていますし、その妹の夕美の彼氏は、一見ぬけているように見えるのですが、フランス語もしゃべれる謎な男だったりして、海外に行ってしまいます。
 
常盤貴子演じる先生の男は、どうにも煮え切らない職場の先生なのですが、はたからみるとパッとしないのですが、ベタ惚れなのです。

間宮兄弟のほうが、誠実だし、大事にしてくれるはずなのに、と思うところですが、男としての魅力は、残念ながら彼女たちにとってはないのでしょう。
ただ、一応、彼女たちがなびいてくれるときも存在しています。

友情の抱擁だから

常盤貴子演じる先生は、相手の男が、家にも呼んでくれないし、親にも紹介しないっていうので、不信がっていたりして、心が折れているときがあります。
そんなときに、塚地武雅演じる徹信に言います。
 
「MDまだですか。楽しみにしてたのに」
 
以前に貸しますよ、と約束していたものですが、ちょうどその時に徹信には、別の女性に気があったため、その好意に気づくことなく過ぎてしまいます。
一瞬、彼らのやさしさに心がゆらいでくれます。彼らはすごくいい人なんですが、やはり、いいひとで終わってしまいます。

ただ、彼らに恋愛とかそういうものが必要なのか、というと必ずしもそうではない、というところがいいところです。
沢尻エリカに対して、直美ちゃんに何か言ってみたのか、と弟に言われた明信は、言います。
 
「たしかに何もいってみていない。それどころか。あえていこうとしていない。なぜだろう」
 
なぜでしょうか。
それは、兄弟でいるほうが居心地がいいからです。
 

姉妹が癒される話

この作品は間宮兄弟が、恋愛をし、方や、まだ兄弟で一緒に楽しく過ごしたい、というところの間で揺れ動く話であると同時に、沢尻エリカ演じる本間姉妹への赦しの物語になっているのも興味深いところです。
姉妹は二人で歩きながら言います。

「わたしたちさ、こんな風に二人で、ぶらぶら散歩できるのも、今だけかもしれないよ」
「そんなわけないじゃん。だって、間宮兄弟をみてごらんよ。いまだに一緒に遊んでんじゃん」

本作品は、もっとマイペースに生きたり、楽しんだりすることを奨励するような作品となっています。
人それぞれの中で、どのように幸せを感じられるかのそのヒントを、教えてくれる作品となっているのが「間宮兄弟」となっています。

以上、ライフスタイル提案型映画「間宮兄弟」感想でした!
 

 

間宮兄弟 (小学館文庫)

間宮兄弟 (小学館文庫)

 

 

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