シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

オススメアクション映画。ジジィの戦いは終わらない「RED」

RED/レッド(字幕版)

 

第一線を退いた人たちが活躍する映画というのは、ある意味の爽快さ痛快さがあり、見ていて楽しいところです。

「RED」は、引退した危険人物の略称であり、元CIAが引退していたにも関わらず、結局、戦いまくるというアクション映画が「RED」となっています。

アクション映画ですので戦いがメインにはなりますが、物語の前半に語られる彼らの想いを受け取ってから本作品をみてみると、その爽快さが増しますんので、そのあたりを解説しつつ語ってみたいと思います。

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引退後の日常

「RED」で印象的なのは、そのオープニングです。

出演者の名前とかがでてくるわけですが、その長いオープニングの間に、彼らの日常が語られているのが素晴らしいです。

ブルース・ウィルス演じる凄腕の元CIAであるフランクは、年金受給者として日々を過ごしています。

彼の唯一の楽しみは、年金に関する相談係であるサラとの電話でした。

CIA時代の彼は、恋人や家族が危険にさらされることを心配していたこともあり、恋をしないと誓っていましたが、引退後ということもあってか、サラのことを好きになってしまいます。

ちなみに、彼にとって、日常というのはおそらく、退屈なものだったと思います。


それでも、彼は日課のトレーニングを続けます。

別に彼は肉体を鍛えるのが好きでたまらない、というわけではないと思います。腹筋をするときの彼は、つらそうな顔をしているためです。

フランクの日常は決して楽しいものではなかったものの、サラとの22回にもわたる電話によって、うるおいを得ていたことがわかります。

ハーレクイン的な日々

一方で、フランクが好きになったサラという女性について考えてみます。

彼女は、ここではないどこかに憧れている女性です。

仕事場には、いろいろな場所の写真が貼っており、仕事も好きではないけれど、別に特別なことがあるわけではないから日々を過ごしているように見えます。

そんな彼女が、フランクと話をしているのは、元CIAだったという経験があるため、いろいろなところにいったことがあるフランクと話すのが楽しかったからです。

「お見合いをすすめられのよ。私が、男嫌いじゃないかって」

といった話をフランクとしているところから、彼女は、男性に消極的だったり、もてないかというと、まったくそうではありません。

若い男の子を足蹴にするような扱いをしてみたり、「実家ぐらしで、私と遊ぼうなんて甘いのよ」

というセリフから、彼女が魅力的であり、且つ、自分へのプライドが高いこともわかります。

 

でも、彼女は満たされないのです。

「RED」はたしかに、引退したジィさん達の妄想のような活躍ものでもありますが、日々を不満げに過ごし、どこか遠くにいきたいという女性の心を連れ去ってくれる甘美な(アクション映画ですが)物語でもあるのです。


誘拐同然でつれていかれたサラですが、頭は薄いとはいえ、ボートも運転できて、強くて、自分の知らない世界につれていってくれるブルース・ウィルス演じるフランクは、王子様のように見えてくるのです。

 

ハーレクイン的な味方

ハーレクイン小説といえば、キャリアウーマンな女性が、大成功した男性に連れ去られて、その男性を好きになっていくということが多い、一定のジャンルだと思っていただければと思います。

 

君主との冷たい蜜月 (ハーレクイン・ロマンス)

君主との冷たい蜜月 (ハーレクイン・ロマンス)

 

 

頭の薄いブルース・ウィルスということで、ハーレクイン分は薄いかもしれませんが、おそらくお金もそれなりにあるフランクと、バイオレンスとアクション溢れる世界に連れていかれ、いつのまにか、恋人になっている、という点では、アクション映画版ハーレクインといっても「RED」という作品は、過言ではないと思われます。


途中から、サラはあまり存在感を発揮することはありませんが、その状況におびえることなく、楽しみながらジジィ達と一緒に行動していく姿は、面白くも頼もしくなっていきます。

 

アクション映画として昇華

基本的に、本作品はアクション映画なので、難しい話は考えなくて大丈夫です。


かつて、戦いに明け暮れていた人たちが引退。

再び戦いに巻き込まれながらも反撃を重ね、その中で再び勝利を手に入れる、というある意味典型的なものになっています。

イギリスの大女優であり、「クィーン」でダイアナ妃の事故死をめぐる時期のエリザベス2世を演じたヘレン・ミレンが、元MI6として登場してきたりもします。

 

クィーン [DVD]

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かつてあって大人たちの恋も描きつつ、恋のさや当てをするシーンなどは、ハラハラさせられるところです。

人が死ぬか生きるかというところで、そんなコイバナをしてしまうあたりも楽しめるところです。

ジジィ活躍映画

「RED」でやはり、一般的な見方としては、引退したおじいさんたちが、まだまだ現役で戦えるぜ、という痛快さもあると思います。


フランクと、モーガン・フリーマン演じるジョーが話すシーン。

「老人施設にはいっているなんて。信じられないだろ」

かつて、バリバリに戦いっていたにも関わらず、年をとった、という理由だけで遠ざけられてしまう、という現実的な問題がうっすら見えるところです。


さて、そんな老人たちが活躍する映画として、面白い作品があります。


クリント・イーストウッド監督・主演である「スペースカウボーイ」は、まさに老人活躍映画の典型といえるでしょう。

元技術者たちが、宇宙にいくために奔走するという点において、ロートルだからこその技術や知識がさく裂する映画となっています。

 

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暴力は追いついてくる

一方で、「RED」をみていて思い出すのは、ディヴィット・クローネンバーグ監督による「ヒストリー・オブ・バイオレンス」でしょうか。

ヴィゴ・モーテンセン演じる主人公は、記憶喪失になっていますが、家族もいて幸せな生活を送っていました。

ですが、ひょんなことから自分が暴力によって人を倒すことができることに気づきます。

この作品は、自分の暴力性は、忘れたと思っていても追いかけてきてしまうという恐怖と事実を示した作品となっており、「RED」は、引退したあとでもやはり、暴力が追いかけてきてしまう、という点では似たような部分があるといえます。

 

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もっとも、「RED」は、自分の過去を後ろめたいものと思っていませんし、サラにしても、彼が次々と人を殺しても、それほど気に病む様子もありません。


「RED」は、サラから見れば、知らない世界へ自分を連れ去ってくれるハーレクイン的な物語であり、フランクからすれば、女性の恋をした元CIAの青春取り戻し映画としてみることもできるのです。

同窓会映画といってもいいかもしれませんが。


いずれにしても、物語冒頭でフランクとサラが望んでいたものは、きちんと手に入って、さらに、続編への期待をもたせるという点で、大変面白くみることができます。

続編「REDリターンズ」もあります。

 

REDリターンズ (字幕版)

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同じく、老人たちの活躍を描く作品として「エクスペンダブルズ」がありますが、こちらは、物語性というよりは、かつてのスターたちの、俺たちは使い捨てじゃない、という怨嗟を含めて面白くみる映画となっています。

 

エクスペンダブルズ (字幕版)
 

 


以上、オススメアクション映画。ジジィの戦いは終わらない「RED」でした!

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