シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

孤独を恐れるな。ロビン・ウィリアムズ主演。映画「ビックショットダディ」

ビッグショット・ダディ(字幕版)


人はだれしもが孤独を恐れます。

誰にも理解されず、愛されないで生きるのはつらいことです。

名優ロビン・ウィリアムズが主演した映画は数多くありますが、「ビッグショットダディ」はロビン・ウィリアムズの魅力をいかんなく発揮した作品になっています。

息子が、自慰の最中に死んでしまったとき、父親はどうするべきなのか。

そこから始まるコメディは、みる人を勇気づけてくれるはずです。

 

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孤独を恐れる男

「私の名前は、ランス・クレイントン。孤独な死を何より恐れている」

ランスは、作家志望のさえない教師です。

自分が受け持つ詩のクラスは人気がなく、生徒にも人気のある黒人教師にとられてしまいそうになっています。

そんな彼ですが、なぜか年下の美人の恋人がいて、それなりに幸せに過ごしています。

ですが、彼の息子は、あまり、品のいい子供ではありませんでした。


本作品は、息子の死を偽装したことで、次々と嘘が大きくなっていってしまうというコメディ映画になっていますが、物語の本質はそこではありません。

 

誰にも理解されないこと

彼は本を書いても著作が出版されることもなく、自分の評価されてもうれしくないことで評価されてしまいます。

彼の詩の授業の生徒はやる気が空回りしているような人たちばかりで、自分のことを理解してくれそうな人もいません。

若い恋人のクレアもまた、ミーハーな女性で、創作クラスを受け持っている黒人教師に心が動いてしまう、悪い女性です。

でも、ランスは、そんな恋人の行動を強く非難することもできません。


他人の成功を素直に喜ぶこともできず、かといって、行動することもできない。

そんな彼のぐるぐるとまわってしまう心境は、物語の冒頭の円形道路で表現されていたりします。

 

息子の死

クレアが自分とのことを考えてくれたことで、ランスと息子のカイルは、食事を一緒にすることになります。


しかし、その場でカイルがしていたのは、クレアのスカートの中を盗撮することでした。

ランスは、カイルが自分の首を絞めながら自慰行為を行い、そのまま死んでいることをみつけて号泣します。

しかも、恋人であるクレアのスカートの中身をみながら行為をしていたのは明らかであり、それが原因で死んだというのは、耐えられないことだったのです。

作家としての才能があったランスは、息子が自殺したように見せかけます。


本作品は、物語の約半分を息子が死ぬ前の時間にあてています。

カイルは、正直いって、いい息子ではありません。

下品で粗暴で、女性を見れば下品なことしか考えられない下衆な人間です。

彼の友人であるアンドリュー以外は、誰しもがカイルのことを快く思っていなかったのは間違いありません。


ですが、彼の死と、その後に発見された遺書によってすべてが変わっていきます。

人というのはバカなもの

たんなるバカな男だと思われていたカイルは、遺書が公開されてしまったことで、聖人となっていきます。

繊細な魂をもった人間だったが、まわりは彼を理解してあげることができなかった。

そんな誤解と、多くの人が彼をバカにしていた罪悪感によって次々と誤解の輪が広がっていってしまうのです。


ビッグショットダディ」の面白いところは、よくある誤解がどんどん広がっていくところです。

そして、ロビン・ウィリアムズの演技やキャラクターがいいために、まったく退屈することなくみれてしまうところにあります。


ますます息子のカイルは神格化されていきますが、同時に、ランス自身は孤独を募らせていきます。

それは、自分だけが息子の死の真相をしっているのに、それを知らない周りの人間はますます彼を後戻りできないところにおしあげていってしまうからです。

心が離れかけていた恋人は戻ってくるし、生徒たちも自分を慕ってくる。

彼が描いていたような世界ではありますが、ですが、ここで本当の孤独を彼は知るのです。

本当に大事なもの

ランスは言います。

「孤独に死ぬことが最悪な人生だと思っていた。だが、孤独を感じさせる人に囲まれるほうが最悪だ」


彼は詩が好きで、映画が好きな男です。


たしかに、映画の冒頭の彼にとって、小説がベストセラーとなり、好きな女性や、お金を手に入れることは一つの目標でした。

ですが、いざ、息子の死をきっかけとして、みんなに嘘をついて過ごし、理解されないことのほうがつらいことに気づいたのです。

本来であれば、そんなことは気にせずに、天才的な息子を亡くしてしまった父親を演じることで、富も名声も手に入ったことでしょう。

ですが、クイーンの名曲「アンダープレッシャー」とともに、彼は、服を脱ぎ捨てて走り出すのです。


ロビン・ウィリアムズのその演技力がなければ、たんなるぶよぶよとしたおっさんがプールに飛び込むシュールな物語になってしまったところでしょうが、彼のキャラクター性がいかんなく発揮され、文字通りすべてを投げ出すことで、彼は本当に欲しかったものを手に入れるのです。


本作品は、比較的短い作品でありながら、人間の本質を描いていますし、どうするべきかも描いています。


彼の才能を多くの出版社は認めてくれていませんでしたが、隣に住む老婆や、息子の親友のアンドリューは気づいてくれたのです。

自分を偽りながら生きるのではなく、自分を信じてくれる人とともに歩む人生をとった、という素晴らしい映画になっています。


以上、孤独を恐れるな。ロビン・ウィリアムズ主演。映画「ビッグショットダディ」でした!

 

 

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