シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

人生の選択ミス。17歳に戻れるならどうする/セブンティーンアゲイン

セブンティーン・アゲイン [Blu-ray]

 
人生の中で、誰しも一度は「あのとき、こっちを選択していれば今頃は」と悔しく思ったことがあるのではないでしょうか。

一度選択してしまった事柄を帰ることはできませんが、もしも、やり直すことができれば違った人生を歩んでいただろうなと考えてしまうのもまた人間の性です。


そんな、誰の心にも潜んでいる願望に対して、コメディタッチでみせてくれる映画が「セブンティーンアゲイン」です。

 

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17歳でイケメン。

 作品そのものの概要をざっと説明してしまいますと、期待のバスケ選手として目をかけられていた17歳の主人公マイク・オドネルは、大学への進学をかけた重要な試合の時に、恋人から妊娠の事実を告げらます。

バスケットを続けていけば、誰もがうらやむ人生になれたかもしれません。

しかし、主人公は、妊娠した彼女を選び、そして、十数年の時を経てたんなる冴えないおじさんになってしまっています。


妻には離婚請求をされ、子供達にもあきれられ、親友の家に居候するマイクは、誰がみても酷い有様でした。


そんなときに、謎の老人の力によって、17歳の絶頂期の身体にもどった彼は、再び人生の栄光をつかみとろうとする。


っといった話しが、前半だけのあらすじとなっています。

主人公を演じるのは、当ブログでも紹介している「ネイバーズ」シリーズに出演し、肉体美とイケメンさを如何なく発揮した、ザック・エフロンです。


「セブンティーンアゲイン」が2009年に公開され、ザック・エフロンにとってのヒット作となっています。

 

若返る

セブンティーン・アゲイン」というタイトルから、過去に戻ってやり直す話かと思いがちですが、本作品は、肉体を戻すだけとなっています。


30歳を過ぎたマイク・オドネルは、中年の冴えないおじさんです。


直接的にはそれほど言われていませんが、妻が妊娠しておらず、バスケットを続けていることができれば、自分の人生はかわっていたに違いない、という思いがあったのか、人生の選択を悔やんでいます。


彼は、わざわざ自分の通っていた高校に行き、自分が人生で絶頂だったときの写真をみます。


人生においては、若いときが最高だった。

栄光に包まれていた、という中で、大人になっていくと過去にすがりたくなる人間がでてきてしまうのはやむえないことでしょう。

 

主人公には、オタクで金持ちの親友がいて、17歳に戻った彼は、親友の援助で高校に入学しなおします。

 

そこで、彼は、自分の息子がいじめられていることを知り、さらに、娘がいかにも悪そうな男と付き合っているのを知ってしまうのです。

 

コメディ

言うまでも無く、この作品は、コメディ映画です。

テンポもよく、笑えるポイントが沢山あります。


オタクで金持ちの親友であるネッドは、主人公を高校に入学させるときに出会った女性の校長先生に恋をして、オタク的なアプローチをかけますし、主人公が17歳に戻ったことで、別れようとしている夫だと知らずに奥さんが惹かれてしまったりと、コメディ要素が満載です。


見た目は17歳、中身は30代の主人公ならではの、いじめっ子をぎゃふんといわせるシーンなども、すっきりするところです。


難しいことを考えることもなく、楽しむことができますが、一方で、きっちりと抑えるところを抑えているのもポイントです。

 

主人公は純粋

こういった作品ですので、彼は、再び選択を迫られます。


家族か、栄光か。

そのどちらかを選ぶのかは、改めて映画をみていただくとして、この主人公がイケメンなのに、嫌味がないというのが、本作品をみていて気分のいいところです。

 

それは、彼という男が、選択を間違ったというよりは、自分が本当のその選択をして正しかったのかを信じられなくなったため、だからではないでしょうか。


もしも、主人公が本当に妊娠している彼女を捨てて、自分の未来のためにバスケットの試合を続けるような主人公であれば、本作品の主人公にはなれていません。


作中では、たびたび、主人公は誘惑されます。

ザック・エフロン演じるイケメンであり、運動もできて、やさしい男に惹かれない人はなかなかいないでしょう。

ですが、主人公はその誘惑に一度として負けることはなく、奥さん一筋のまま進みます。


さらには、学校の保健の授業で、避妊についての説明が行われるにあたり、主人公は、性行為についての重要性について説きます。

はじめこそまわりは、ドン引きしていますが、彼が子供達のことを思っての発言により、クラスの雰囲気はかわります。


ここで重要なのは、彼は、当時の奥さんを妊娠させたことを後悔してはいない、ということです。

若いうちの性行為で、人生の選択肢がなくなるよ、とは言っておらず、

「愛した人としなきゃ。愛し合って赤ちゃんをつくる。その赤ちゃんの辛い目にあったら、支えてやりたい。失恋の時も」

と、自分の子供や守るべきものに対しての姿勢を説いているだけなのです。


後悔しているからやり直すというよりは、はじめから、主人公は、選択したことに対して後悔などしていなかったりするところがポイントです。

 あくまで、自分の正しい選択が、あたりまえの惨めな日常によって、ゆらいでしまっている男が、再び、選択に対して覚悟を決めるという話しになっているのです。

選択と可能性の物語

さて、本作品は、再び17歳に戻って、やり直せたらいいな、という話しにみせかけつつ、選択したことに対して後悔する必要はない、という物語だということがわかってきます。


物事をやり直したい、という映画は様々ありますが、

自分のせいで、幼馴染の人生が狂ってしまったことに気づいたタイムリープできる主人公が、過去を改変しようとする「バタフライ・エフェクト」などが有名どころです。

 

 

バタフライ効果と共に、過去を変更することの難しさと、自分だけが取り残されていく恐怖を描いた作品でもあります。


また、逆に、その人間の全ての人生を経験し尽くした人間の物語として描かれたのが、ジャコ・ヴァン・ドルマル監督「ミスター・ノーバディ」だったりします。

 

選択できなかったあまりに、すべての可能性を経験する人間の一生を描きます。

 

そういった意味では「セブンティーン・アゲイン」は、17歳に肉体が戻っているだけで、過去の改変は一切行われない過去改変ものといえるでしょう。


変わったのは、主人公の心構えだけです。


「人生最高の選択を忘れていた」

 

人間誰しも、そのときの決断に対して疑問をもってしまうものです。

平凡な日常の中で埋没し、やがて、自分の意思がゆらいでしまうことだってあります。

しかし、そんな中でもやり直すことができる、ということを示した作品となっていますので、気になった方はご覧になってみるといいかもしれません。

 

ちなみに、主人公の親友であるネッドは、とあるきっかけで、エルフ語を話します。

「僕は、普通のふるまいはできない」

という男であり、愛を手に入れることができない男でした。

ですが、彼は、オタクであるという自分の信念を通した結果、本当にわかりあえる人と出会うことができたのです。


ちなみに、エルフ語は、「指輪物語」の著者であるJ・R・R・トールキンがつくったファンタジー世界に存在するとされるエルフが話す言語です。

実際に、エルフ語で話す人がいるという話はきいておりましたが、実際に、そういったところで意気投合する人たちがみられるという点でも面白い映画となっています。


以上、人生の選択ミス。17歳に戻れるならどうする/セブンティーン・アゲインでした!

 

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