ライプスタッフ。老人だって宇宙を目指す/スペースカウボーイ
クリント・イーストウッド監督は、「ダーティー・ハリー」シリーズなどにおいて俳優として有名ですが、ハリウッドの中でも数少ないA級監督の一人でもあります。
映画を見終えた後にも余韻が残るのが特徴の一つであり、映画を見終えたあとで考え直すことができる作品ばかりを作っています。
ですが、そんなクリント・イーストウッド監督の中で「スペース・カウボーイ」はすこしばかり様相が異なります。エンターテインメント寄りともいえる本作品について、考えてみたいと思います。
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老人だって宇宙を目指す。
物語は、速さへの情熱が、空から宇宙へとうつりかわる時代を経験し、宇宙を目指しながらも挫折してしまった老人たちが、再び宇宙を目指すという内容になっています。
クリント・イーストウッド監督の中では、珍しいSFものです。
小説ではありますが、老人が宇宙を目指すSF作品として、フレドリック・ブラウンの「天の光はすべて星」なんかが有名で、アニメ「天元突破グレンラガン」においても、最終話のタイトルになった作品でもあります。
老人であったとしても、夢にむかって進むのに、遅いことはないことがわかる夢のある作品です。
ライトスタッフ
「スペースカウボーイ」をみるにあたって、予習しておきたいのは「ライトスタッフ」です。
ライトスタッフもまた、飛行機のりだった男たちが、その乗り物をスペースシャトルに変え、宇宙に行こうとする姿を描いています。
「スペースカウボーイ」もその移り変わりの時期をオープニングのシーンで流します。
「ライトスタッフ」は、空を翔けるものたちだけが共有する正しい資質(ライトスタッフ)にかかわる物語となっており、宇宙で華々しく活躍する宇宙飛行士がいる一方で、テストパイロットを続けている人物もいる、宇宙開発における光りと影が示されていますし、いつ死ぬかもわからない旦那を支え続ける奥さん達の姿や、宇宙飛行士から脱落してしまった人間の悲惨さなども描いた作品です。
劇中でクリント・イーストウッド演じる主人公達がニュースで取り上げられ、「ライプスタッフ」と揶揄されるところがあります。
ライプ(Ripe)とは英語で熟した、とか、そういう意味がありますので、映画「ライトスタッフ」と、老人集団による乗組員達とを掛けたネーミングだと思われます。
若者には負けない。
「スペースカウボーイ」は老人VS若者という構図の中で、失われた技術を老人たちはもっている、という点がおもしろかったりします。
物語の発端からして、スカイラブという宇宙ステーションでつかわれた機器が、ロシアの通信衛星に積まれており、その通信衛星でつかわれている機器を修理することがクリント・イーストウッド演じる主人公の任務になります。
クリント・イーストウッドは、かつて宇宙を目指した仲間チーム・ダイダロスを復活させるべく奔走し、いい具合に年を重ねた仲間をかき集めます。
特にトミーリー・ジョーンズ演じるホークは、飛行技術が卓越しており、コンピューターでも不可能な飛行を可能にしたりしますし、女性にももてます。
長生きした老人の知識と経験によって、宇宙への訓練をちゃっかり乗り越えていく様というのも面白いところです。
あと、老人になっても、少年のような気持ちを誰しもが忘れていない点もほほえましいところです。
エンターテインメント
比較的考えさせることが多いクリント・イーストウッド監督ですが、「スペースカウボーイ」に至っては、軽めにつくってあります。
通信衛星とのドッキングや、宇宙空間に行くための訓練など、70近い老人達には正直不可能なことばかりです。
訓練などにいたっては、多少ずるをする場面もあり、現実的ではない部分もありますが、この映画で大切なのは、老人になったとしても、彼らはまったく諦めていないということです。
トミーリー・ジョーンズ以外にもドナルド・サザーランドやジェームズ・ガーナーなど俳優陣も豪華であり、クリント・イーストウッド監督の中でもかなり異色です。
クリント・イーストウッドが気になる方は、見てみるのも面白いかもしれません。また、本作品が気になった方は、3時間を越える映画ですが「ライト・スタッフ」を見てみると新たな発見があるかもしれません。
以上、「ライプスタッフ。老人だって宇宙を目指す/スペース・カウボーイ」でした!
当ブログでとりあげた、クリント・イーストウッド監督作品は以下となります。