狂犬・渡瀬恒彦のたたずまい 完結編
松方弘樹に続き、渡瀬恒彦もこの世を去りました。
次々やってくる『仁義なき戦い』のキャスト陣をみて、新しい映画製作に燃えているのかもしれません。
本稿では、名優・渡瀬恒彦が最も輝いていたと思われる東映/ヤクザ映画を取り上げて、彼の魅力に改めて迫りたいと思います。
渡瀬恒彦の主演映画
渡瀬アニキの主演映画は意外と多くありません。
その中で自分が最も好きなのは『鉄砲玉の美学』。
カルトなヤクザ映画として知られ、現時点ではDVD化されておりませんがGYAOストアで視聴することが出来ます。たぶんDVDになることはこの先もなさそうなので(とはいえ、ここ最近レアで未ソフト化だったヤクザ映画がDVD化されることも多く期待がないわけではないですが・・・・・・)、見られる時に見ておきましょう。
無軌道なテンピラの無残の散り様、それをみごとに演じきった渡瀬アニキ。
ヤクザ映画好きなら決して外すことの出来ない一本です。
詳しいレビューはこちら↓
主演作でファンも多いのが、深作欣二監督『暴走パニック 大激突』(1976年)と中島貞夫監督『狂った野獣』(1976年)。
東映を代表する両監督が渡瀬アニキを主演に迎え、カーアクションを題材に映画を撮りました。
ヤクザ映画とはひと味違うテイストですが世相を反映した熱い作品です。
自分としては『狂った野獣』のほうがより印象に残ってます。どちらも好きですけど。
狂犬、渡瀬恒彦
実をいうと渡瀬アニキは主演よりも脇役でこそその独特の輝きを発揮するのではないかと思います。
数ある参加作品の中から幾つかピックアップしてみます。
『仁義なき戦い』有田役でキレキレの演技を見せた若かりし頃の渡瀬アニキ。
このまとめ映像が作られるほど観客に強烈な印象を与えました。
検問中の警官の土手っ腹を撃ち抜いて逃亡する無謀さ、プライスレスであります。
『仁義なき戦い 代理戦争』ではヤクザ志願の若者タケシ役を好演。工事作業をする母親にタバコを渡す照れくさそうなタケシ・・・・・・。しかし、そんなタケシも抗争の犠牲となります。いつの時代も犠牲になるのは若者なのです・・・・・・。
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『博徒外人部隊』(1971年)でも血気盛んな若者を演じています。こういう役柄はまさに渡瀬アニキにピッタリで芸能界喧嘩最強説もうなずけるものがあります(まあでも、映画内では暴れたあげく無残に死ぬパターンが多いですけどね)。
さらに印象に残っているのがこちら『現代やくざ 血桜三兄弟』(1971年)。これはたぶん今でもDVDにはなっていないので見るのが大変ですが、なぜソフト化されていないのか不思議な一本です。
『実録・私設銀座警察』(1973年)でのヤク中殺人マシーン・渡会役も衝撃的でした。 映画内では最初から最後まで随所に登場する印象的なキャラクターで、私は渡瀬アニキといえばこの鬼気迫る演技を思い浮かべます。
松方弘樹主演の『北陸代理戦争』(1977年)。キャスティングされていましたがジープでの事故のため重傷を負ってしまいます(余談ですがヤクザが病院まで緊急搬送してくれたおかげで大事を免れたらしいです)。予告編のみの登場で代役は伊吹吾郎が務めました。
『山口組外伝 九州進攻作戦』 (1974年)での主演菅原文太の舎弟役も見事でした。アニキに、拳銃をぶち込まれる渡瀬恒彦。タマを撃つ時も撃たれる時も迫真の演技を見せるてくれます。
一風変わった助演作品といえば『セーラー服と機関銃』(1981年)。薬師丸ひろ子主演のアイドル映画です。零細ヤクザ・目玉組をまとめる若頭。ヤクザ映画全盛の時とは違い、渋さ満載・色気たっぷりに演じています。
狂犬は銀幕の中に
ほかにも『沖縄やくざ戦争』や『学生やくざ』、『博徒斬り込み隊』での演技も印象的です。実の兄である渡哲也とはひと味違う、独特の切れ味と弾け具合。幸いにもたくさんの映画で渡瀬恒彦は輝きを放っています。私も全ての出演作はまだ見ていません。これからぽつぽつと未見のヤクザ映画を観ていく予定ですが、その中で渡瀬恒彦を見つける喜びをこれからも味わいたいと思います。