読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

本当に怖いのは人間/遊星からの物体X ジョン・カーペンター監督

遊星からの物体X [Blu-ray]

  遊星からの物体Xといえば、巨匠ジョン・カーペンター監督の代表作の一つであり、その後の漫画や映画に多大なる影響を与えた作品でもあります。

ついつい、1984年の映画なので、敬遠してしまう人もいるかもしれませんが、劇中ででてくるその生物や、恐慌状態に陥った人間の恐怖などを見事に描いた、パニックホラーの金字塔です。

その後に与えたと思われる影響や、物語のつくりかたなどを含めた中で見てみたいと思います。

 

一体何がはじまるのか。

 

有名な映画ですので、どういった内容かご存知の方も多いと思います。

ですが、この映画を純粋に見ていたときに、ファーストシーンからして引き込まれるのは、ジョン・カーペンター監督の力に他ならないでしょう。

一匹のシベリアン・ハスキーが走っているのを、ヘリコプターに乗った人間がライフルで狙うというシーンからはじまります。

実に可愛い犬なのですが、それを執拗なまでに狙うシーンからして、これから何がはじまるのか、なぜ犬が狙われなければならないのか、という疑問が頭の中に膨らんできます。

スポンザードリンク

?

 

 

シベリアン・ハスキー 2016年 カレンダー 壁掛け

シベリアン・ハスキー 2016年 カレンダー 壁掛け

 

 


この映画の前半部は、「一体、何が起こっているのか」ということに迫っていく物語となっています。

おっちょこちょいのおじさんが、自分であけた手榴弾を爆発させてしまい、しかも、恐慌状態に陥った人が銃を乱射しようとして逆に撃ち殺されます。

その人物たちは、南極の別の基地の人間だったのです。

 

南極という過酷な世界の中で起こった事件。

カート・ラッセルたちは、事件について探るべく、相手の基地へとヘリを飛ばします。


相手の基地は、むちゃくちゃに破壊されており、しかも、その多くの死体が焼かれています。

中には、絶望の挙句自殺したと思われる遺体まであり、とんでもないことがおきていることはわかるものの、具体的に何が行われているのかはさっぱりわかりません。

資料と思われるものはスウェーデン語でかかれており、カート・ラッセルたちは解読することはできません。

 ただ、残っていたビデオテープから、何かを掘り出したことはわかるのです。

犬の演技と特撮

この映画で注目したいのは、やはり、犬の演技です。

シベリアン・ハスキーは可愛らしいのですが、意味深な動きをします。

ゆっくり歩いたり、隊員達の足元にすりよったり。

その犬の演技を見るだけでも、ドキドキしてきます。

そして、ついに、謎の生物、劇中ではthe thingと呼ばれるバケモノが現れるのです。


さて、このThe thingと呼ばれるバケモノ。

「遊星からの物体X」というタイトルは日本語オリジナルであり、原題の「the thing」は、直訳すれば、事柄、事、生物そのもの、といった意味合いとなります。

それ、ではなく、そういう、もの、といった意味で考えていただければいいのではないでしょうか。

そのバケモノをつくったのが、特殊メイクの第一人者ロブ・ボッティンなのです。

ロボコップ氷の微笑、トータルリコールでは特別業績賞を受賞するなど、特殊メイクにおける技術は群を抜いた存在です。

「遊星からの物体X」は、ロブ・ボッティンの名前を知らしめた作品でもあるのです。


「遊星からの物体X」ででてくるモンスターは、すべてが気持ち悪いです。

CGなんてまともに使われていなかった時代で、特殊メイクと撮影の力で、30年経った今みても、まったく見劣りのしないできばえです。


その、モンスター造詣は、後にでてくる色々な漫画・映画にも影響を与えていると思われます。

 

影響を受けたと思われる作品?

 

このモンスターは、同化と呼ばれる能力をもっていて、寄生した生物とまったく同じ姿に変形することができます。


ただし、それは表面的な問題だけで、中身は、全身が凶器になっているとんでもないバケモノなのです。


突然気を失ってしまった男を助けようとして、その男の腹に手を置こうとした瞬間、あるいは、驚いていると、顔がぱっくり割れてそのまま食われてしまう、など。

人間の身体や発想とははるかに逸脱した動きをします。


その姿は、まるで寄生獣そのものです。


寄生獣といえば、岩明均の漫画です。


宇宙からやってきた謎の生命体に寄生された主人公は、右手に寄生した生物にミギーと名付け、人類を影からのっとろうとするヤツラ(その生命体)に対して対抗しようとする話です。

1988年から連載された本作品ですが、遊星からの物体Xに非常に似通っているといえるでしょう。

 

寄生獣(1) (アフタヌーンコミックス)

寄生獣(1) (アフタヌーンコミックス)

 

 

遊星からの物体Xもまた、はるか昔に宇宙からやってきたと思われる生物が、年月をかけて南極の地表近くにせりだしてきて、それを人間が掘り出すことで物語が動きはじめます。


寄生獣もまた、身体がありえない状態に割れたりしながら、人間を捕食するシーンが数多くみることができます。


「遊星からの物体X」の影響は間違いなくあるでしょう。


また、バケモノに寄生された頭に足が生え、逆さになって逃げようとするシーンがあります。

書いているだけで気分が悪くなりそうな生物ですが、ホラー漫画家の大家伊藤潤二の描く漫画でも、似たような顔だけで動く生物が登場しているので、もう、ホラー系の物語の造詣に多大な影響を与えたといっても過言ではないでしょう。

 

ギョ 1 (ビッグコミックス)

ギョ 1 (ビッグコミックス)

 

 

物語の構造だけで言えば、非常に似通った作品もあります。

それは、リドリー・スコット監督「エイリアン」です。

1977年に公開された映画ですが、宇宙船にのった乗組員が救難信号をたよりに言ってみると、そこでは何者かによってとんでもない目にあっていた、異星人の宇宙船だった、というものです。


口の中から、口がでてくるという意匠は、「遊星からの物体X」でも似たような描写はありますが、こちらは、口の中から犬の口がでてくる、といった、いずれにせよ生理的な嫌悪感をばっちり刺激するバケモノになっています。

 

人間が一番怖い

前半は、一体何が起きたのか、ということがわかってくるのがポイントですが、中盤で重要なことは、バケモノではありません。


バケモノは、寄生した人間と同じ姿になることができます。

すると、どうなるのか。

隊員達が疑心暗鬼に陥ります。

「この中に、バケモノがいるかもしれない」


犯人あてゲームが始まるのです。
そして、それに耐えられなくなった人間が、銃をもちだしたり、機械を壊したりしながら、人間同士の争いが始まるのです。

 

疑心暗鬼。

この言葉は、うまくできていまして、疑心が暗鬼をつくり、暗鬼が疑心を深める。
人間の中に潜む鬼こそが、さらなる悲劇を生み出すのです。


そして、視聴者側ははっと気づくのです。


これって、彼らが一番初めに見た壊された基地の光景に似ている、と。


彼らは、自分自身の未来を他人の基地で既にみていたことになるのです。

一体何が起きたんだ、ということ、それは、彼らがこれからはじめることで明らかになっていく、という演出と物語の進め方は秀逸です。

 

セカイノオワリ

 

「6時間後に嵐が来る。それまでに決着をつけるぞ」


この物語には時間制限があります。

バケモノは寒さの中でも冬眠するだけで、死にません。

ですが、人間は当然死にます。


その中で、人間がバケモノを殺すことができるのか。

でも、その中で、ほぼ間違いなく隊員達が死ぬことは示されています。


バットエンドじゃないか、と思う人もいるでしょうが、これは、謎の生物、と人類の戦いでもあるのです。

バケモノが人類の文明に到達すれば2万7千時間で人類はいなくなる。

どういった計算かわかりませんが、そんな話がでてきます。


だからこそ、主人公達は、「個」として生き残りたいという気持ちもありながら、最終的には「種」として、バケモノと闘う、ということになっているのです。


ギリギリの戦いの中で、どうやって人類を存続させていくのか。

彼らは戦いを始めます。

 

ここからネタバレ、というか考察。

 

ネタバレが気になる方は、是非見てきてから戻ってきたいただきたいと思いますし、これは、個人的な推論に基づいた記述ですので、気にしなくてもいいとは思います。


さて、よく物語のラストで、二人の男が生き残り、やがて、死を待つことになります。


「あとは、どうする」

「見届けるさ」

バケモノが寄生していれば、救援隊がかけつければ第3の惨劇が行われてしまうでしょうし、二人とも人間であれば、人類の勝利になりますが、彼らは死にます。

さて、実はこの物語、南極の基地の話ですが、2週間以上本部ととれない、ということがたびたび示されています。


南極大陸の基地。
他の基地でも通信が途絶えて、果たして、2週間も本部と連絡がとれないなんてことがあるのでしょうか。

二人がThe thingに寄生されているとか、いないとか、それ以前に、もう人類は彼らにのっとられているのではないでしょうか。


この物語で考えてしまうのは、必ずしもバケモノが、カート・ラッセルがいる南極第四基地だけに来たとは限らない、ということなんです。


彼らの未来を暗示していた別の基地。

これが同時多発的に起こっていたら、あるいは、カート・ラッセルのところに来たのはだいぶ後になってからだったとしたら、彼らの通信が届かないのは不思議ではありません。


ラストシーンは、心地いいまでの絶望感で終わります。

そして、この物語は南極という地球の片隅で起こった出来事です。
原作も南極とはいえ、地球のメインの大陸はどうなってしまっているのか。


それは示されないところに意味があるようにも感じてしまいます。


さて、この物語は、「遊星よりの物体X」という作品のリメイクになっています。


大きなレンタルショップにいくと、両方並んでいて、どっちを選べばいいかわからなくなるときがあるかと思いますが、ジョン・カーペンター監督ほうをみて、物語が好きになったら、前作である遊星よりの物体Xを見るといいとおもいます。

 

ジョン・カーペンター監督は、他にもゴーストに乗っ取られる物語を描いており、「ゴースト・オブ・マーズ」では、火星で次々とゴーストに身体をのっとられていく、というパニック映画をつくっています。

 

モンスターも怖いですが、一番、怖いのは危機に陥ったときの人間なのです。 

 

ちなみに、この物語の前日談「遊星からの物体X ファーストコンタクト」も2011年に公開されていますので、興味のある方は見てみてもいいかもしれません。監督は違いますが。

 

以上、「本当に怖いのは人間/遊星からの物体X ジョン・カーペンター監督」でした!

 

本作品で、ジョン・カーペンター監督の他作品について言及しているのは、以下となります。

 

cinematoblog.hatenablog.com

 

 

 

 

スポンサードリンク