シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

狂犬・渡瀬恒彦のたたずまい

今回は俳優・渡瀬恒彦氏の若かりし頃(つまりは東映のヤクザ映画に出演していた頃)の溢れる魅力について書きます。

渡瀬恒彦の魅力とは?

まずはなんといってもその「眼の力」。

彼の演じるチンピラがなぜ魅力的かというとその眼の鋭さ/凶暴さにあります。

眉を寄せて相手を見る。

その仕草だけで「役」を表現できる稀有な役者なのです。

さらには、その声/発声の魅力。

渡瀬アニキの出演する映画を観た方ならご存知でしょうが、自分本位で向こう見ずなやくざを演じさせるのにピッタリな威勢のいい声をしています。

スポンサードリンク

?

このようにパッと見で魅力が伝わってくる俳優は、その名前だけでお客を呼べる力を持っていますよね。 

1973年の渡瀬恒彦

では具体的におすすめな渡瀬恒彦出演映画を紹介していきます。

 

まずは、『仁義なき戦い』の第一部(1973年)。

有田という薬の密売を生業とするやくざを演じています。

目上にあたる松方演じる坂井にも一歩も引かないどころか噛み付くような姿勢を見せる、いきのいい演技を観ることができます。

 こんな俺得なまとめ動画も作られるほど印象的な役でした。

『仁義なき』シリーズでは『代理戦争』(1973年)でも、「若者の報われない死」の象徴たる猛役を演じています。めっちゃ悲しくも心にグッとくるキャラクターでした。

 

続いては幻のやくざ映画ともいわれる『鉄砲玉の美学』(1973年)。

長らく視聴することが難しい作品でしたが現在は動画配信サイトで課金さえすればいつでも視聴できます。素晴らしい世の中になったものです。

 

100万円と拳銃、つまり金と力を手に入れた代わりに鉄砲玉として「弾ける」役回りを引き受けた渡瀬氏。大阪から宮崎に飛んで、気ままに遊びまわります。姿の見えない「上」の連中の手のひらで運命を弄ばれる彼は結局、あらぬ方向に「弾け」とんでしまうのでした…。若きチンピラの夢と絶望を描いた傑作で、まさに渡瀬氏にピッタリな役回り。随所に素晴らしすぎるチンピラ演技を見せてくれます。渡瀬ファン必見の名作です。

 

『実録 私設銀座警察』(1973年)の渡会役も忘れてはいけません。冒頭、復員兵姿で、いきなり赤ん坊とかつての女をぶち殺し、その後クスリに溺れ、殺人マシーンとなるヤバすぎる姿を熱演。最期は血反吐をぶちまけて事切れるという、リアル兄貴である渡哲也の演じた『仁義の墓場』(1975年)の石川力夫を彷彿とさせる(というか先取りしてますね)クレイジーさです。兄弟揃ってヤバい役やりすぎ。

 

というようにこの1973年は、東映実録路線にとってはドル箱シリーズであり路線の代名詞ともなった『仁義なき戦い』シリーズの公開された年であり、渡瀬恒彦にとってもバイオレンスな魅力たっぷりな役を演じられた躍進の年でもあったんですね。

ちなみに『博徒外人部隊』(1971年)や『現代やくざ 血桜三兄弟』(1971年)、『まむしの兄弟 傷害恐喝十八犯』(1972年)でもイケイケなチンピラを演じていて「若くて威勢のいいやくざ=渡瀬恒彦」という公式が自分の頭の中にできあがってしまいました(笑)。

その後の渡瀬恒彦

イケイケチンピラ俳優街道まっしぐらに恒彦アニキは、その後も『山口組外伝 九州進攻作戦』(1974年)、『唐獅子警察』(1974年)、『実録外伝 大阪電撃作戦』(1976年)でもその暴れん坊ぶりを見せてくれます。

そんな中、『狂った野獣』(1976年)や『暴走パニック 大激突』(1976年)といったアクションシーンてんこ盛りの作品で主演。

そのカーアクションでのノースタント演技が評価されたのか『北陸代理戦争』(1977年)でもジープに乗って拷問する役柄が与えられていましたが事故を起こし、再起不能寸前の大怪我を負ってしまうという悲劇。伊吹吾郎がピンチヒッターとして引っ張り出され、本人はあえなく降板の憂き目にあいます。

予告編ではバッチリ名前入りで映っています。

実録やくざ映画の季節を過ぎた渡瀬アニキは1981年にアイドル映画『セーラー服と機関銃』に出演。親分を亡くした組の代貸を演じて、やくざ映画ファンの自分としては、これまでの「チンピラやくざという役回り」から「冷静さを獲得し、主人公を見守る中年のやくざ」への変身に心を掴まれました。相変わらず目力は抜群。

渡瀬アニキよ、いつまでも

主演をつとめるドラマ『警視庁捜査一課9係』 シリーズも10年を越え、2016年になってもバリバリ現役な渡瀬アニキ。『仁義なき』シリーズ関係者が病没したり、体調を崩したりする年齢になってきているのも事実です。

芸能界喧嘩最強伝説を持っていたり、実はインテリでエリートだったりとスターらしい様々なエピソードで彩られている渡瀬氏が「いつもギラギラ」していた1970年代の作品をぜひ振り返って見て下さい!

 

スポンサードリンク