シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

任侠・やくざ映画

仁義なき戦い 銀座篇  佐藤純弥監督『実録 私設銀座警察』(1973年)

今回は私が特に愛してやまない作品をご紹介したいと思います。 それは佐藤純弥監督『実録 私設銀座警察』でございます。 安藤昇、渡瀬恒彦、梅宮辰夫ら東映ヤクザ映画でおなじみの面々が戦後の混乱期から復興へ向けて沸く銀座を舞台に成り上がっていく様子を…

本当に仁義なき戦い 菅原文太『人斬り与太 狂犬三兄弟』(1972年)

仁義なき戦いよりも仁義がない 今回ご紹介する『人斬り与太 狂犬三兄弟』は深作欣二監督による作品です。従来の仁侠映画路線を意図的に外して「ワルすぎる」ヤクザを主役にし、本作と同じ深作・菅原コンビによる『仁義なき戦い』シリーズへと発展する記念す…

安藤組、解散  『安藤組外伝 人斬り舎弟』(1974年)

本日は実録安藤組シリーズの番外編である『安藤組外伝 人斬り舎弟』についてお話したいと思います。監督は中島貞夫、主演は番外編ということで(安藤昇ではなく)菅原文太です。 安藤組外伝 人斬り舎弟 [DVD] 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D) 発…

三政さん(おそ松さん的な感じで) 中島貞夫監督『バカ政ホラ政トッパ政』(1976年)

『バカ政ホラ政トッパ政』(1976年)は中島貞夫監督作品で、主演を菅原文太がつとめています。いわゆる東映ヤクザ実録路線の一本に数えられる作品です。 バカ政ホラ政トッパ政 [DVD] 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D) 発売日: 2015/11/11 メディ…

破天荒な若手総会屋を描く傑作! 松方弘樹主演『暴力金脈』(1975年)

個人的な話で恐縮ですが、何者でもない若者が金(や力や女)を求めて成り上がる、という分かりやすい話が大好きで、不良性感度ビンビンの東映はそんな私の性分にピッタリなのであります。 そんなわけで今回ご紹介する映画は中島貞夫監督『暴力金脈』。 これ…

深作欣二×北大路欣也の隠れた名作! 『資金源強奪』(1975年)

知名度はそこまで高くはないかもしれませんが、まぎれもない傑作をご紹介させていただきます。 深作欣二(本作ではひらがなの「ふかさくきんじ」名義)監督、北大路欣也主演の『資金源強奪』です! 資金源強奪 [DVD] 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE…

狂気の暗黒ドキュメンタリー 『やくざ残酷秘録 片腕切断』(1976年)

安藤昇の関わった映画 数々の映画に出演し、自分自身をモデルとした役だけでなく脇役としても存在感を発揮した安藤昇。彼がナレーションを担当した映画が1976年に公開されました。 監督は椎塚彰と安藤昇(安藤は「企画・構成」としてクレジットされたそうで…

安藤組vs国家権力 『実録安藤組 襲撃篇』(1973年)

本作は『やくざと抗争 実録安藤組』に続く、実録安藤組シリーズの一本です。 前作の終盤において安藤昇たちは安藤組(作中では矢頭組)を結成しました。その後、表向きは一企業として看板を掲げた安藤たちに組の未来を大きく左右する事件が起こりました。 実…

安藤組、爆誕。 『やくざと抗争 実録安藤組』(1973年)

1973年の映画たち 1973年は日本映画にとって非常に重要な年です。この年の1月に『仁義なき戦い』が封切され、新たなヤクザ映画の誕生に観客は沸き、続く4月にシリーズ最高傑作ともいわれる『仁義なき戦い 広島死闘篇』、さらに9月には第1部の群像劇をより拡…

赤飯と菅原文太   深作欣二『現代やくざ 人斬り与太』(1972年)

『現代やくざ』シリーズは菅原文太が主演していることをのぞけば、各作品に時系列的なつながりはありません。監督もころころ変わります。 本作はシリーズ第5弾で、『仁義なき戦い』でおなじみの深作欣二がメガホンをとっております。 深作監督作品を筆頭とす…

野坂昭如の歌が響いて・・・  『現代やくざ 血桜三兄弟』(1971年)

本日は菅原文太主演『現代やくざ』シリーズの4作目、中島貞夫監督の『現代やくざ 血桜三兄弟』を取り上げたいと思います! 血桜三兄弟とはこれまた素敵なタイトルでございまするが、これは菅原文太、伊吹吾郎、渡瀬恒彦の三人を意味しております。文太と吾郎…

慕情は国を越えて   鈴木則文『まむしの兄弟 恐喝三億円』(1973年)

本日は『まむしの兄弟』シリーズから6作目の『恐喝三億円』を取り上げたいと思います! ちなみに『恐喝』と書いて『かつあげ』と読むみたいです。 かつあげで三億円なんて景気がいいったらありゃしないですね!(どうやら映画公開の5年前にいわゆる三億円事…

鈴木則文の演出術   菅原文太主演『関東テキヤ一家』(1969年)

今回はこの後に『トラック野郎』シリーズを生み出すことになる、菅原文太と鈴木則文監督のコンビによる『関東テキヤ一家』シリーズの1作目をご紹介! 関東テキヤ一家 [DVD] 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D) 発売日: 2009/07/21 メディア: DVD ク…

昭和十年、東京にて。  中島貞夫『まむしの兄弟 懲役十三回』(1972年)

『まむしの兄弟』シリーズの3作目。監督は中島貞夫。なぜか舞台を昭和十年に移し製作された作品です! 主な登場人物 政(菅原文太)・・・まむしの兄弟。 勝(川地民夫)・・・まむしの兄弟、弟分。 弥之助(天知茂)・・・浅草菊村一家の代貸(だいがし)。…

ヤクザ映画おすすめブックガイド!

今回はヤクザ・任侠映画を観る前・観た後に読むと大変オモチロイ本を紹介してしまいます! ヤクザ映画なんて観たことないよー! という人でも楽しめるような本、実際に自分が読んでみてよかったと思う本を紹介しますので、気になる方はぜひぜひ手に取ってく…

おかめ横丁戦争   中島貞夫『まむしの兄弟 傷害恐喝十八犯』(1972年)

今日は中島貞夫監督作品『まむしの兄弟 傷害恐喝十八犯』を取り上げます。『まむしの兄弟』シリーズの4作目となります。 主な登場人物 ・政太郎(菅原文太)・・・「まむしの兄弟」。政太郎。 ・勝次(川地民夫)・・・「まむしの兄弟」。不死身の勝。政をア…

おかあやんとヤサグレのジュン  『まむしの兄弟 二人合わせて30犯』(1974年)

今日は菅原文太・川地民夫主演の人気シリーズ『まむしの兄弟』の7作目『二人合わせて30犯』(1974年公開)を取り上げてみたいと思います! 監督は大物監督の工藤栄一。脚本は鴨井達比古が担当しています。 まむしの兄弟 二人合わせて30犯 [DVD] 出版社/メー…

文太と由美子、その悲恋のゆくえ  佐伯清『現代やくざ 盃返します』(1971年)

今回は菅原文太主演、佐伯清監督『現代やくざ 盃返します』(1971年)を取り上げます。 『現代やくざ』シリーズは菅原文太の代表作の一つです。とはいえ、あまりヤクザ映画に興味のない方、あまり観たことない方は聞きなじみのないシリーズだと思われます。…

夜桜銀次、死神を背負う男  『山口組外伝 九州進行作戦』(1974年)

大変、お久しぶりです。ニャロ目です。 今回は菅原文太主演、山下耕作監督の1974年の東映実録路線の傑作である『山口組外伝 九州進行作戦』を取り上げたいと思います。 長らくソフト化が待たれていましたが、山口組の最近の騒動を知ってかしらずか、2015年に…

現代風にアレンジされた「正統な」ヤクザ映画  北野武『龍三と七人の子分たち』

2015年現在、北野武最新作である『龍三と七人の子分たち』をDVDで観賞しました。『アウトレイジ』前後からエンターテインメントを志して映画製作を続けてきた北野監督。本作品の見どころを紹介します。 龍三と七人の子分たち [DVD] 出版社/メーカー: バンダ…

悪臭ふんぷんたるレジスタンス  深作欣二『狼と豚と人間』

今回は深作欣二監督のギャング映画『狼と豚と人間』(1964年、95分)を取り上げます。 出演は高倉健(黒木次郎=次男)、三國連太郎(黒木市郎=長男)、北大路欣也(黒木三郎=三男)というそうそうたるメンツでございます。もう50年前の作品なんですね~。…

この男もまた、凶暴につき…  深作欣二監督『やくざの墓場 くちなしの花』

今回は前回に続き、深作欣二監督である『やくざの墓場 くちなしの花』(1976年、96分)を取り上げます。 この作品は同じく渡哲也主演『仁義の墓場』の内容のつながりはないものの続編的な位置にあり、同じく深作監督の『県警対組織暴力』などにも通じる「ヤ…

なぜ彼は「仁義」という言葉を墓石に彫ったのか?  渡哲也主演 『仁義の墓場』

今日は渡哲也主演のヤクザ映画『仁義の墓場』(1975年、94分)を取り上げたいと思います。 この映画は『仁義なき戦い』の深作監督が担当しています。 『仁義なき戦い』と『仁義の墓場』。 なんだかタイトルが似ていますね。 しかし、タイトルで扱われている…

汗をかかないヤクザたち 北野武『アウトレイジ』、『アウトレイジ ビヨンド』

ニャロ目でごじゃる。 今回はみんな大好き、北野武の『アウトレイジ』(2010年、109分)、そして続編にあたる『アウトレイジ ビヨンド』(2012年、112分)を取り上げたいと思います。 過去のヤクザ映画や北野作品と比較しながらみてみましょう。 『仁義なき…

ドブネズミと人間    深作欣二『恐喝こそわが人生』

こんにちはニャロ目です。 今日は、深作欣二監督、松方弘樹主演『恐喝こそわが人生』(1968年、90分)を紹介したいと思います! 強請り屋組織「四ツ葉会」 「カツアゲのコツは三つある」 「仲間を増やさないこと」 「無理押しをしないこと」 「一度カツアゲ…

キタノ流フィルム・ノワールの萌芽  『その男、凶暴につき』

ここ最近、にわかキタニストになっている私ですが、今回は記念すべき北野武第一回監督作品『その男、凶暴につき』を取り上げてみたいと思います。 ○基本データ 監督 北野武 脚本 野沢尚 制作・原案 奥山和由 監修 黒井和男 1989年公開、103分 キャラクターに…

ナポレオンフィッシュにうってつけの日 北野武『ソナチネ』

何もやる気がおきない、そんな時には昼間からアイスかスイカでも食べながら、北野武監督作品『ソナチネ』(1993、93分)を見ましょう。 沖縄の美しい自然と濃厚な死の匂いが、人生の豊かさを感じさせてくれることでしょう。 暴力・倦怠・沖縄 広域暴力団、北…

北野武『3-4x10月』のオチをどう考えるか?

国内にも国外にもファンの多い北野武監督。 北野映画といえば、ヤクザなどアウトローが主役になることが多く、今年も「元ヤクザのジジイ」と詐欺集団の対決を描いた『龍三と七人の子分たち』が公開されました。 その北野監督の2作目『3-4x10月』について取…

映画は脚本なり~笠原和夫の脚本術~

『仁義なき戦い』シリーズや『県警対組織暴力』でおなじみの脚本家笠原和夫はシナリオ制作の段取りについて以下のように整理しています。 1コンセプトの検討 2テーマの設定 3ハンティング(取材と資料収集) 4キャラクターの創造 5ストラクチャー(人物…

松方弘樹は三度死ぬ   『仁義なき戦い』シリーズより

はじめに 映画『仁義なき戦い』シリーズの大きな特徴として、「同じ役者が別人として複数回登場する」ことが挙げられる。 こんな画期的な方法がいまだかつてあっただろうか(まあ、じつはあります。東映はよく使ってます)。 『仁義なき戦い』シリーズ(この…

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